2018.12.15(土)

第4回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

戸惑いながら、共同で「つくる」

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これまでメンバー全員でディスカッションを行い、その後それぞれが一人になって言葉にすること(=エッセイを書く)を続けてきたが、今回は映像の撮影という非言語的な表現を用いて、「東京でつくる」を考えてみることに。テーマは「東京にふれる」。
ゲストにお迎えしたのは、NPO法人記録と表現とメディアのための組織[remo]のメンバーである久保田テツさん。remoで展開しているプログラムの一つ「レモスコープ」の手法である6つのルール「カメラを固定すること」「音声を入れないこと」「編集をしないこと」「エフェクトを入れないこと」「ズームをしないこと」「1分間」を守りながら、メンバーは好きな場所へ移動し、撮影に臨んだ。

約15分間の撮影を経て再集合し、自己紹介をしながら各々の映像を鑑賞。撮影対象には制約がなかったため、撮ってきたものは工事現場や空、道行く人々などさまざま。「大きな画面で見てみると、風で木が揺れているのがわかったり、自分がちょっと映っているのにも気づけた」「(工事の様子を撮影した映像を見て)うるさいものなのに、無音で見ると違うように見えて面白い」「映像は抽象度が高くなると違うものに見えてくる」など、自由に感想を言いながら映像を眺めた。
それを受けて、久保田さんから2回目の撮影にはテーマをつけようとお題が。あらかじめ挙げられていた候補の中から、「さよなら、東京」がテーマに選ばれた。次の撮影時間は30分。再度撮影に繰り出した。

1回目は一人ずつだったが、2回目は12名分の作品を一気に鑑賞。見終わると、それぞれがテーマに対してどのようにアプローチしたかなどを述べ合った。あるメンバーは「去っていく人」を見つけようとし、またあるメンバーは「夕暮れの洗濯物」に「さよなら感」を感じたという。自分が東京を離れるときに見るであろう風景をイメージし、撮影した映像もいくつか上映された。
久保田さんは「最初に撮ったものよりも、引きの絵が多いような気がしました。都市の風景を広い範囲で見渡している。“東京”という言葉によって、全体像をなるべく捉えたいという意思が働いたのかなと思います。それから個別の人というより、群衆としての人といった、不特定多数さも表れているように感じます。これも皆さんの中での、一つの東京の在り方なのかなと思いました。テーマの抽象度が上がれば上がる分、自分で考えないと撮れなくなるので、これは相当考えて撮られているはず」とテーマの扱い方についてコメント。
また、映像というメディアの特徴として、その情報量の多さゆえに、テーマや表現したいことがダイレクトに伝わりにくいということが挙げられた。そのために編集や字幕といった加工がなされるが、それによって見落とされてしまうものも多くあるという。「ルールがシンプル、原始的であればあるほど、それを見ているときに理解しようという能動性が上がってくような気がしていて。今日はそれをすごく実感できた感じがします」(久保田さん)。
メンバーからは「なんでもなかった場所に愛着を持った」「普段だったら擦れ違って終わる人と、コミュニケーションできそうな感じが起こったのが面白かった」などという感想が上がった。また、普段俳句を詠んでいるメンバーの高須賀真之からは、「映像を撮るときの視点が、俳句を詠むときの視点と近いのかな」という感想が。それに対し、久保田さんも「まさにそう! 言葉を映像に置き換えた句会です」と共感した。17文字という言葉でなのか、1分間という映像でなのか、手法は違えど「情景を切り取る」という点で共通している。

最後に石神が活動をしている理由を久保田さんに質問した。「単純に面白いんですよ、皆さんが撮ったものが。一言で言うと、見たことがないものだらけなんです。戸惑いながら撮られた映像ってあんまり見ないでしょう? それがすごく新鮮に映るし、面白い」と理由を述べた上で、「同時に、これはコミュニケーションだと思っているんです。そうやって戸惑いながら撮られたものを見せ合うと、やっぱり謎が多いじゃないですか。このワークショップは対話の場も必ずセットにしてるので、全員で何かものづくりをしている感覚になってくる。個々の表現だけれども、テーブルを一つにして、共通のルール、テーマでつくっていくと、この人はこう考えた、この人はこういうふうに迷ったということが、自分の中で一つのものになっていく感じがしますね」と答えてくれた。
それに対して、普段から演劇という共同で「つくる」ことに取り組んでいるメンバーからは自分だけで抱えないことが大事だと共感の声が上がった。

Text=嘉原妙

関連資料

第4回についてのお知らせメール
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差出人:石神夏希

2018年12月14日(金)

件名:第4回についてのお知らせメール

こんにちは。
あっという間に時が駆けていく師走も、もう半ば。
急に寒くなりましたが、お元気でしょうか?

明日の第三回は「東京にふれる」というテーマで
ゲストとして久保田テツさんをお迎えし、ワークショップを行います。
iPhone、iPad、Androidなどいずれでも構いませんが
映像を撮影できる機器(できればスマホなど身軽に扱えるものがよさそう)をお持ちください。
https://www.daion.ac.jp/professor/033
http://kiito.jp/people/kubotatetsu

久保田さんは映像作家・音響作家であり、音大などで教えていらっしゃると同時に
NPO remo[特定非営利活動法人記録と表現とメディアのための組織]
代表理事もつとめられています。

私が「remo」を知ったきっかけは、
『はな子のいる風景—イメージを(ひっ)くり返す』という書籍でした。
井の頭自然文化園で暮らしたゾウのはな子について、
市井の人が撮ったあらゆる写真、飼育日記、エッセイなどを
集めた一冊です。明日、持っていきますね。
(これを企画編集されたのはremoの松本篤さん)

私はここ数年間、
「小さな声が語る物語の集積によって、まちを立ち上げる」
という演劇の活動をしてきたので、remoの考えている
「非専門家である個人の記録の潜在的な価値」にも強く共感するものがありました。

そして今夏、京都芸術センターでの『かかわりの技法』という
トークシリーズで久保田テツさんと一緒に登壇しました。
その中で、久保田さんの手がける映像ワークショップに興味を持ち
今回、ぜひ皆さんと一緒に体験してみたいと思いました。

このスタディでは「エッセイを書く」という、言語を使った思考方法に特化しています。
これまで、物理的に離れたところから東京を眺め直す、というプロセスを経てきました。
そこで今回は「非言語的な表現を経由する」という手法の面で、
遠回りをしてみようと思いました。
ひょっとしたらそのほうが、「東京にふれる」という点では直接的かもしれませんが…。
それぞれが撮った映像を一緒に眺め直すことで
自分の無意識がとらえている「東京」の片鱗に出会えるかもしれない、と期待しています。

また、明日はこのスタディで最後に発行するエッセイ集の編集を担当してくださる
編集者の和田安代さんにも、オブザーバーとして参加していただきます。

明日は屋外に出かけることになると思います。
快晴の予報ですが、暖かい格好と、歩きやすい靴でお越しください。

どうぞよろしくお願いいたします。