2019.2.24 (日)

第7回

場所:パズル浅草橋

「東京でつくる」をめぐるQ&A

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半年間の取り組みを共有するために設けられた報告会。前回の議論や実践を踏まえ、「東京でつくる」にまつわるいくつかの質問を用意、20秒以内にYES/NO(もしくはどちらとも言えない)の席に移動し、それぞれの意見をシェアするという形式を取った。これまでの活動日で続けてきたディスカッションや、毎回執筆してきたエッセイに現れるそれぞれの思考をこの場に立ち上がらせようという試みである。今回はメンバー全員から問いを集め、そのうちの5つをピックアップした。

最初の質問は、「あなたは東京の一部ですか?」。「消極的なYES」だというあるメンバーは、「東京に住んでいるので、そういう意味ではYES。ただ東京の捉え方によって、NOになりうると思う。東京の機能の一部に組み込まれてしまうことに対しては、抵抗を感じる。言い切りたくない」と答えた。一方、「いっそ、東京の一部として巻かれてしまうことも楽しいのかもと思ったりする」というメンバーも。
また、「あなたにとって“東京”と“つくる”との間には関係がある/ない」という質問では、「地元では、現在行っている自分のつくる活動が継続できない、難しいなと思う。周りに同じようなことをしている人がいないということもある」という、東京が出身ではないメンバーからの意見に対し、「今まであまり意識してなかったが、つくるとなると、東京生まれであるということに向き合う必要があると感じてきた」という東京出身のメンバーも。また、「東京でつくっているメンバーを見て、東京でつくる必然性について向き合わないといけないと感じた。ただ自分の住んでいるところ、出身地との関係について、今はそこまで見えていない」という声も上がった。
ここで石神夏希がスタディ2のナビゲーター、居間theaterにも同じ問いを投げたところ、「東京とつくることには関係があるといえばあるし、ないといえばない。制作は自分たちが今いる場所に関係しているが、つくるという欲求自体は東京から出発する時もあるしそうじゃない時もあると思う。そして、つくったものが東京に還元しうる場合もあるし、全然別のどこかに繋がることだってあると思う。」とさまざまな場所で制作している立場からの回答があった。

メンバーから出た「エッセイを読んでもらいたい人の顔が思い浮かびますか?」という質問では、「自分自身のことを掘り下げるために書き続けていたので、他者は浮かばない。何年か経って、価値観や考え方が変わった自分にとって意味があるものになるのではないかなと思う」「メンバーに読んでもらうために書いたので、それ以外に読んでもらいたい方は思い浮かばない。だから出版するとなったときに、えっ! と思った」「出版されると言われたときに、テキストの修正をした。そのときにした修正は、親に読まれたら困るなというところ。親に読んでほしいかと言われるとわからないけれど。誰かに自分が考えていたことを認識してもらえたら嬉しい思いはあるが、具体的にはわからない」というように、あくまで自分のため、広くてもメンバーと共有するために書いてきたため、見られることをあまり考えていなかった、という意見が集まった。
一方で、「書いたものは、誰に読まれてもかまわないと思って書いている。書いている最中は、他者の視点を意識して書いてはいた。出してしまった後はある程度の覚悟をしている」「書いた時点で手を離れている。読まれて困ることはない」という声もあった。

40分の持ち時間が迫る中、最後の質問は「このスタディが終わったら東京でつくる/つくらない」というもの。これについてはスタディのメンバーだけではなく、会場にいる全員が実際に席を移動して参加した。
「今つくっているものがあるので、続けていく」「東京の必然性がまだわからないので、それが決まるまではつくらないかな」というメンバーからの考えのほか、会場からは「現時点でつくっている。まだ東京がわからない。自分の身体の一部になってない。つくって探求するしかない。身体化していきたい。東京がわからないから東京でつくっている」という「つくる」側や、「東京は何でもある、何でも許される。一つの絵もいろんな人が面白いと言ってくれる。故郷は、前例のないものを面白いと思わない。そういうところに身を投じてみて、その地域に合った面白いものをつくっていくというのも一つの挑戦かなと」という「つくらない」側の意見が上がった。

最後は、時間の関係で取り上げられなかった問いを一挙に紹介して終了。「あなたは東京にあこがれを感じますか?」「あなたの“故郷”に比べて、東京は文化や芸術と触れる機会が多いと思いますか?」「東京の空は青いか?」。どんな答えが出るのだろうか、それによって何を知りたかったのだろうか、と感じさせる問いが並んでいた。

Text=嘉原妙 Photo=川瀬一絵