2019.9.11 (水)

第2回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

東京における“劇場外の演劇”について

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記録係の堀切梨奈子です。スタディ2、第2回目は9月11日(水)19:00から、ROOM302で行われました。

今回の主題は、東彩織による、東京における“劇場外の演劇”に関するリサーチ報告と、そのディスカッションです。ナビゲーターたちが2017年に訪れたミュンスター彫刻プロジェクトにパフォーマンス形式の作品が出品されていたように、パフォーマンスが当たり前に美術の文脈に入ってきており、芸術祭ではモノを置くよりも、そこで起きる出来事を作品と呼ぶようになってきてもいます。今回は、演劇という文脈から“まちに作品を存在させる事例”を見ることで、今後のスタディのヒントを探していきました。

1960年代、芝居(能や歌舞伎)や西洋の演劇をモデルとする新劇に対して行われた演劇運動(第1次小劇場運動)が“劇場外の演劇”の上演のはじまりでもあると考えられており、その事例として、『状況劇場(唐十郎)』『劇団黒テント(佐藤信)』『天井桟敷(寺山修司)』、また、劇場の中で新しい上演方法を探った『早稲田小劇場(鈴木忠志)』などが紹介されました。これらの試みは、1964年の東京オリンピックなどをきっかけに、めまぐるしく変化がはじまりつつも、まだ整いすぎていないまちのなかで、まちや社会の抜け道をみつけ、反制度的なスタンスで繰り広げられたものだったそうです。その後1970年代に、日本全国で劇場の整備が進んでいくと、これらの演劇運動に関わった主要人物たちは劇場の主要ポストに就くなどして、“劇場外の演劇”はいったん下火になっていきます。

近年の事例としては、2009年から開催されている舞台芸術祭『フェスティバル/トーキョー(F/T)』の関連作品を中心に、『Port B(高山明)』『リミニ・プロトコル』など、反制度的というよりも、社会の問題を浮き彫りにするような試みが紹介されました。また、『東京アートポイント計画』や『六本木アートナイト』などのアートプロジェクトでも“劇場外の演劇”は数多く上演されており、演劇と美術の境界が曖昧になっていることにも触れられました。

ディスカッションのなかでは、「“劇場外の演劇”において劇場をどのようにつくっているかに着目してみると、60年代の事例はテントなどによって劇場を丸ごと再構築するのに対して、近年の事例は客席のつくり方を考えることによって劇場をつくっているのではないか」「境界が曖昧になっているとはいえ、美術と演劇のパフォーマンスは何かが異なるのではないか」といった議論が交わされました。また、「演劇は、上演時間が終わった後は残らない、ということを強みにしているように感じる」「“劇場外の演劇”の事例を見ていると、公共彫刻は24時間上演していると捉えることができるのではないか」といった議論からは“上演時間”という新しいキーワードが見えてきました。さらに、「唐組『ビニールの城』に行ってみよう」「Port B『個室都市 東京』の再演が近く行われるらしい」など、過去を振り返るだけではなく、実際に“劇場外の演劇”に足を運んでみようという雰囲気も。

次回のスタディでは、今回の演劇的な視点に対して、美術的な視点からパフォーマンスや美術館について考えていく予定です。

Text=堀切梨奈子