2019.1.19(土)

第8回

場所:小金井アートスポット シャトー2F

その人の取りやすい姿勢

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この日はまず、展覧会についてお菓子をつまみながらみんなで話をした。僕は「忘れらない些細な他者」というアイデアをどういった手法でまとめようとしているのかについて話す。吉立開途さんは、AIやフレーム問題と引ひきつけて、デジタルでは把握できない世界について話をしてくれた。平田絵美子さんは前回に引き続き、人生ゲームというコンセプトが気になっているらしい。人生のメタファーとしての人生ゲーム。芦田忠明さんは、ちょうどお子さんが来ていたこともあり、プラレールなどを使った映像作品を製作したいとのこと。
これまで同じワークをしているが、みんなまったく違うことを考えている。それはある意味では当然だが、ある意味では驚くべきことかもしれない。

次に、大西暢夫さんがいま取材している、重度身体障害者向けの車椅子をつくる職人についての話をきいた。まずその職人さんたちがつくっている車椅子を見せてくれた。一般的にイメージされるような車椅子とはまったく異なっていて、まるで現代アートのようなフォルム。重度身体障害者の方は、その人の取りやすい姿勢に合わせたフォルムをオーダーメイドでつくるため、結果的に現代アートのような形態が生まれるそうだ。
驚くべきは、その製作過程である。重度身体障害者の方はコミュニケーションが難しい。そのため職人さんは、どのような形態が合うかを実際に座ってもらって試して、その時の些細な反応を頼りに、かたちを決めているという。コミュニケーションの根本に関わってくるようなエピソードだ。こうした共同作業は、想像するだけでとても大変なように思えるのだが、大西さんによると、職人さんは楽しくてやめられないらしい。
しかしながら、感心するのは大西さんのセンスである。重度身体障害者本人ではなく、彼らの使う車椅子をつくる職人さんに着目し、試行錯誤しながらつくるプロセスを通じて、結果的に重度身体障害者の方の世界を描いている。こうした問題はシリアスに仕立てることはできるだろうが、そうせずに明るくユーモラスに描くのは、なかなかできることではないだろう。

そういえば、プロジェクターで写真を映しながらのトークだったのだが、そのとき芦田さんの息子さんがプロジェクターの前に来て、車椅子の写真をじっと眺めていた。すると大西さんがトークを中断して、「何に見える?」と尋ねていた。そんなふうにして、毎度のごとく、ゆるやかなカオスの中を進んでいった。

Text=松山雄大

関連資料

第8回アーティストからのメール
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差出人:揚妻博之

2019年1月24日(木)

件名:今後の制作について

皆さま

こんにちは。ベリリンは最近気温が下がり雪もちらほら。今週末からは本格的に雪が降りそうな気配がしています。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
制作に向けて、手を動かしている方、案を練っている方、まだはっきりと形となって現れてない方、それぞれだと思います。自分も実際何を見せるのかまだ決まっていません……。

12/2(日)の花崎攝さんとのワークショップのいくつかの写真や動画、送って頂いたプラン、宮下美穂さんからお聞きしたこと等から、思ったことを簡単にですがお伝えします。全てフォローできてないと思いますが、何かあればML等で順次気づいたことを連絡します。

まず、皆さんが持つイメージが、ワークショップやMLなど、様々な空間の中で交錯し、また12月のワークショップでは、実際の建物の空間の使い方も面白く見受けられました。皆さんがつくったものが、シャトーで構成され展示される様子を思い浮かべ、今からとても楽しみにしています。

以下、それぞれの方へのコメントですが、一方的であったり、もしかしたらこのコメントに引きずられることもあるかもしれません。
いまそれぞれの中で進行していることをまず第一に、考えすぎず、参考までに捉えて下さい。少し行き詰まったところで何か参照するぐらいがちょうど良いのではないかと思います。

揚妻博之

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芦沢さん:花について造詣が深いと宮下さんからお聞きしました。また、大西暢夫さんのテキストからインスピレーションを得て写真を展示する案をお聞きました。もしかしたら、William Egglestonの花の写真や以前も話に出た清野賀子さんの花の写真を見るのも良いかもしれません。恐らく自分が普段見ている花への眼差しとの違いに気づくことでしょう。
写真は、構図だけでなく、場所や時間、花が持つ意味や強さなど様々な情報を持っていると思います。また、何か自分の中で大切にしているものが作用して、その景色は唯一無二であると思います。それは鑑賞者にとっても同じことで、作者の眼差しを受け取るということは、とても掛け替えのないものだと思います。
実際にモチーフは花にならないかもしれないですが、自分がずっと大切にしているものを対象に他者と視線を交錯させると自分の眼差しがクリアになることがあります。

芦田さん:送って下さったプランを拝見して、「プラレール」という言葉が強かったので、自分が知っている作家で、パラモデルやクワクボリョウタを思い浮かべました。有名な作家なので恐らくご存知だと思います。いずれの作家も空間の捉え方が上手で、かつ映像(時間)的ですね。作品を作る上で少し参考になるのではないかと思いました。
花崎さんの12月のワークショップのコメントで「もしかしたら、人ではなく、例えばボールが転がってくるとか」とありました。ゆっくりしたものに早い動きが突然現れたり、ハプニング的に予想外な事柄が現れる。またオブジェクトとサブジェクトが突然入れ替わるなどすると、鑑賞者の視点が色々と変化すると思いました。あとは、プラレールが何の比喩なのか、疑問を持ちました。

芝辻さん+辻さん:宮下さんから、共同ワークをする案を聞きました。芝辻さんは作家ですし、辻さんも企画案を見る限り、作品を作ることにとても慣れているようですので、お二人が持っている要素とスキルが上手く絡み合うことを期待してます。もし何かあれば、技術的なことでも良いので気軽にご連絡下さい。

金丸さん:以前、自分のワークショップで「レイヤー」という言葉に引っかかって下さったと思いますが、12月ワークショップでは、素材の扱い方や形、光の扱い方のレイヤーがとても上手だと思いました。皺くちゃの紙に2/3隠されたモニターから何が流れているか。紙とモニターの空間や、紙に映された光のことを想起させます。
モニターに何が映されているのか? それはパフォーマンスの記録なのか? パフォーマンスの装置なのか? また別のものなのか? 
そう言った意味で、見せ方は凝縮と拡張、両面から探れるのではないかと思いました。

加藤さん:送って頂いた、文章のプランとイメージドローイングは一見繋がっているとは思えないですが、そう言ったかけ離れたイメージの即興性はある意味、一つの強力な見えないイメージを呼び起こすことに効果的です。素材に触る中で、「この素材は違うな」とか、「もっと別の方法があるのではないか」など段階的に考えたり、一方で同じ素材でつくる可能性について量で突き詰めても良いかもしれません。
ドローイングを見ると、もし立体としてそのまま起こす場合には、かなり高度な技術と時間が必要になります。それでも限られた時間の中で形に起こしたい場合は、多くの人を巻き込んで完成させる動きが必要になってきます。また、アイディアを他者に伝えるためのモデルやスケッチを含む綿密な設計が必要になってくることでしょう。最初は上手くいかないかもしれないですが、何度もスケッチすることでディティールが明快となっていきます。

平田さん:「場所」をすごく大事にしている印象を受けました。絵を書いたりするときの環境をいろいろと変えて見ると面白いかもしれません。環境によって描画材などのマテリアルや、周りの色、例えば紙を置くとしたらそれを支えるものなど、様々な要素が絡んできます。そういった中で、新しい発見や自分の感覚と近いもの/遠いものなど、画面の中でいろいろな空間が広がっていきます。
あとは、宮下さんからリアル人生ゲームのようなことをやりたいと聞きしました。どのようなものを想像しているのか把握してないのですが、前述の「場所との関係性」と何か繋がっているのではないかと思いました。

松山さん:先日お送り頂いたプランを見て、書いて下さった問い合わせについて考えていたら、取り敢えずに書いて見ようと思い、実際役に立つかはわからないですが、このメールの添付ファイルでお送りします。企画案を読んでから書いたので、もしかしたら少し引きずられているところがあり、ある意味裏切った回答ではないかもしれません。

宮地さん:以前のワークショップでは、皆で色を塗ろうと印刷物をお持ち頂きました。自分はいっぱいいっぱいで残念ながら描くことができなかったのですが、恐らく色をつけたり形を決めたり軽やかにできる方なのかなと思いました。身体の中で時間軸が幾重に動いていることが自然というか、うまく上手く言えないですが、例えば同じモチーフを他者と共有することだったり、12月のワークショップにおいて、ご自身が行ったワークショップの素材を持ってきていたりすることだったり。あとは、インスタレーションのマテリアルの配置の仕方や紙の切り取り方を見てもそのように感じました。今度は、是非一緒に描きましょう。

吉立さん:ジル・ドゥルーズのことでも何でも良いので、考えていることを何かML送って頂ければ、皆さんにとって面白い体験になりますし、自分もそれに対しておしゃべりできるので嬉しいです。もちろん自分のアドレス宛でも良いです。焦る必要はないので、考え過ぎずに気軽にトライして下さい。

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