2018.12.2(日)

第5回

場所:佐野書院(一橋大学)

基本的なあり方が生まれた「転換点」

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今回は、一橋大学にある佐野書院で行った。広い庭の広がる、自然が豊かな気持ちいい施設である。
まず、一人ずつ近況を話す時間があった。みんなそれぞれいろんなことがあるのだなと思った。僕は率直に話そうと努めたが、率直すぎてわかりづらい話をしてしまったかもしれない。まあ、そんなこともあるか。

次に、花崎攝さんのワークショップを行った。前回同様、野口体操をやったが、新しい動作が加わっている。仰向けに床に寝転んだ時に、窓の外の木が目に入った。大きな枯れ木の枝が、空に浮かんでいた。やや曇り空だったため、光の加減もあって枝が黒くみえた。無数に枝分かれしている黒い枝は、灰色の空を背景にすると、血管のようだ。太い枝が大動脈で、細い枝は毛細血管だろうか。そんな風景が、花崎さんのワークをしていたら見えてきた。

ウォーミングアップの後は、前回作成した「子どもの頃の遊びの絵地図」とそれにまつわる詩を、佐野書院の空間を使って表現するということをした。クレヨンなどの画材や毛糸、木の枝などの素材を使って、それぞれが思い思いの場所で「表現」をつくる。
印象深かったのは、芦田忠明さんの作品で、冒頭の芦田さんが床に転がりながら登場するシーンは、みんな思わず笑っていた。
室内だけではなく、屋外を使った人もいた。辻隆公さんは、詩の朗読をパソコンで再生して、その周りに自然の素材を置いて表現していた。池のほとりにある、MacBook Airが何とも印象的であった。
僕は、まず前回の詩と花崎さんのワークで目に入った枝の光景を混ぜ合わせた詩を改めて紙に書いた。その後どうするか悩み、ずっと外の庭と素材を変わりばんこに眺めていた。そしてなんとなく、詩を書いた紙に毛糸を貼り付け、庭の草の生い茂る場所に投げ出す。毛糸を引っ張ると思い出を書いた紙が付いてくるのだが、草が絡まってなかなか取り出せない、といったような作品になった。この作品をみんな面白いと言ってくれた。僕にも作品がつくれるのかもしれない、そう思った。

この日のプログラムが終了して外に出ると、もう完全に陽が落ちていた。そのままみんなで近所にある『ask a giraffe』というカフェへ。この店は、テーブルの上に紙製のテーブルクロスが敷いてあり、そこに何でも書くことができる。食事をしながら、宮地尚子さんと平田絵美子さんは、その大きな紙の上に絵を描いていた。僕も絵を描こうと思ったのだが描きたいものがない。改めて紙とペンを渡されても、なかなか書けない自分に気づく。仕方がないので、その時期に展覧会をやっていたムンクの『叫び』を描き、その頭の上にマルセル・デュシャンの『泉』を描いた。それを見て宮下美穂さんと辻隆公さんは、この絵はアートなのか、について議論していた。

宮下さんが言うには、この日のワークはスタディ5の「転換点」だったらしい。僕もなんとなくそう思う。一人ひとりが自分の記憶や環境、素材と対話し、それによって作品を編み上げる。その作品について、上から評価するのではなく、おのおのが感想を言い合うという空間が成立していた。それは展覧会へと続く、スタディ5が実現していた基本的なあり方であるように思えるからである。

Text=松山雄大

関連資料

第5回についての報告メール
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差出人:マスター

2018年12月3日(月)

件名:第5回についての報告メール

こんにちは、チューターのマスターです。
気づいたら師走に入り、すっかり寒くなって、今年も終わりに近づいてますね。

第5回の様子を簡単にお伝えします。
まず、宮下美穂さんからの挨拶と前回の振り返りと今回の内容についての簡単な説明があった後、久しぶりの花崎攝さんの登場でした。調べてみたら第2回目(10/6)以来の約2ヶ月ぶりです。

今日の体調について一言ずつ話してスタート。なぜか、仕事に関する話が多くなってしまいましたね。
そして、身体を動かすワークをしました。足の甲にある骨と骨の間を触って、実は足の指も長くつながっていることを感じたりしましたね。おしりの左右に体重を乗せたり、腰をゆらゆら、足、手をゆらゆらとさせて、最後は背骨をほぐして、筋肉を使わずに起き上がりました。
第1回の野口体操のお話を思いだした方もいらっしゃるかもしれません。

前回作成した子供の頃の地図とその地図を元にしたエッセイを使って、今回は詩(のようなもの)にしてみました。数行でもいいし、単語、キーワードだけでもOK。会場の佐野書院、とてもステキな場所です。そこの1階やお庭は自由に歩き回って大丈夫なので、探検しながら、散策しながら取り組んでもらいました。

それぞれがつくった詩を音読していただいた後に、ハギレや色画用紙、わら半紙、紐、木炭やクレヨン、そして子供の頃の地図に関連するモノをお持ちいただいた方はそれを使って、平面でも立体でも、どこかに今の自分の世界、感覚、思い出を展示するとしたらどうなるか、やってみました。
「今日はトライアル、わりと直感的にやってもらいたい」と花崎さんが仰っていました。パフォーマンスをする方は、声や動きだけでなく、どこでやるか、始め方と終わり方、時間の進行について考えたり、身体に何をまとうか実験してみましたね。
最後のシェアでも話しましたが、みなさんの制作風景から予想していたことを超える作品やパフォーマンスが、とてもステキでした。

少し長くなってしまいましたが、お休みの方もいらっしゃったので、僕なりにメモしたことで様子が伝わればいいなと思います。
みなさんからの投稿もお待ちしてます。

マスター

第5回ゲストアーティストからのメール
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差出人:花崎攝

2018年12月2日(日)

件名: 今日のみなさんの作品には、さまざまなヒントがたくさん詰まっていたように思います。

宮下さん

今日はお疲れさまでした。
どこに送ったらいいかちょっと迷ったので、とりあえず送ります。

私が個人的に感じたメモです。忘れてしまう前に。
いろいろお話しできれば良かったのですが、時間が足りなかった。

今日のみなさんの作品には、さまざまなヒントがたくさん詰まっていたように思います。要素や素材の組み合わせ、空間、時間、声、身体……。

子どもの頃の具体的な思い出やイメージがあるからだと思いますが、
短時間で、ある意味軽やかに制作されていた姿が印象的でした。
何か繊細な空気、軽やかさと、大胆さと、思い切りの良さと……。

作品のつくり方も当然のことながらそれぞれで、絵地図と昔の写真を現在の仕事につなげた宮地尚子さんの作品。
緑の借景と青い紙、何より青いスズランテープが効いていましたね。
あの三本のスズランテープがあるのとないのとでは、空間の構成も、時間の表現もまったく違っていたと思います。
感覚的には、青いリボンの位置がもう一つ探せたかもしれないな、と思いました。自分を語り、自分に語りかけ、自分自身をエンパワーメントするような作品だなと思いました。

思い出の詩を植え込みから引き出す作品。
インタラクティヴで、動きがあって、いろいろなことを思わせてくれる作品でしたね。
シンプルで、ちょっとユーモラスで、身体的でもあり、あのあまり綺麗に手入れされていない、いろいろな草や蔓などが絡まっている植え込みがとても合っていたと思います。
当たり前だけれど、紐や詩を書いた紙の色や素材を変えてみると、あるいは紙でなく違うものにするとかすると、また違う印象にもなりますね。
いくつかの思い出が、別の場所に別の紐や鎖で引っ張れるようになっているというのもおもしろそう……。イメージが広がります。

ざくろと詩を書いた紙と木の根元から聞こえる録音された声。
ざくろの赤と紙の白、字の黒。何か物語の痕跡のような。
声が地中や木の葉に完全に隠れているところから聞こえると、もっと不思議だったかも。
ざくろは割れていなかったけど、紙はクシュっとしている。
詩の内容も興味深い。まるで人形を乳母車に乗せているおばあさん、通り過ぎる僕、物語の予兆のような。

池の端にかけられた詩と絵。一見無造作に掛けられているけれど、わざと見えにくくしている。
見ようと思わないと見えない、読めない。番号との対照を正確にしようとすると、移動しなければならない。
可能性を探れるといいなと思う。紙は切ってもいいかも、もっと見えにくくしてもいいかも。水のそばだけでなく、違う場所の可能性もあるかもしれない。どうしたいのかという感触がもっと明確になってくるように。

ガラスに布を貼った作品。
場所の奥行きをうまく活かして、宮地さんの作品との接触もあって。
そこにパフォーマンスが加わることで、より場所の奥行きも感じられたし、時間が導入され、動きが加わっている。
ガラスの質感と布の質感。ガラスに布で直線を引く。奥にも布の直線。空調の音が他の生な音を消して効果的だった。3つの空間、光の違い、空気の違い。
もしかしたら、人ではなく、例えばボールが転がってくるとまた全然印象が違うなと思います。

埋立地の明かり。風。明るくて、少し荒涼としている。
迷いのない作業。作者の中にはっきりしたイメージがあるのが感じられる。
声、リーディングがもっともっと工夫できる。読み手の視線はどこを向いているのか。声は、誰に向かって発せられているのか。

太陽のような、ひまわりのような円を描く絵。
ピアノの上。黒いカバー。もっと周りを片付けた方が良かったのか?
もっと隠されていた方が良かったのか?
どのくらいの大きさの円がいいのだろう?
ピアノの音は強い。初恋の曲はどんな曲? ざくろの木はどんな木?

花崎攝