2021.2.14 (日)

第10回

場所:Zoom

これまでの経験をあらわす

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2021年2月14日、オンライン会議ツール「Zoom」にメンバーが集まり、第10回を開催。

「メンバーそれぞれがこのスタディを経て残す、成果物のようなものを共有しあえたらと思います。パフォーマンスなのか、企画書の共有なのか、プレゼンなのか、展示なのか、アウトプットのかたちは自由ですが、なにかしら発表していただきたいです」

ナビゲーターチームからのお題が共有され、メンバーそれぞれはこのスタディから掴もうとしているもの、育もうとしているもの、創り出そうとしているものの企てをオンラインで発表した。当日はグラフィックレコーダーの関美穂子さんをお呼びして、発表の様子をリアルタイムで可視化。また手話通訳として小松智美さん、瀧尾陽太さんが同席した。

■書くという行為をひらく/大塚さん

まず、発表に手をあげたのは大塚さん。「自分の最先端は書くことにあるので15分くらいとりあえず書いてみたいと思います」と共有すると、PCとスマートフォンの二つのカメラを通して、ノートに手書きで文字のようなものを書き続けるパフォーマンスを行った。

既に文字らしきものがある箇所に上書きして、書き続ける。ペンを動かす音や大塚さんの息遣いがZoomの画面を通して感じられた。

途中、ペンを左手に持ち替えると、書く速度や右手の置き方も変化した。

パフォーマンスが終わると、観ていたメンバーから次のようなコメントが共有される。

「白紙に書くときって、どっちにどう書くか、無意識に制限される。もともと字が書いてあると、どこにペンを入れるのか、無意識なのか、どういうことを考えるのかを見てました」

「大塚くんのことを想像しながら、視線のことをすごく考えていて、身体と視線、大塚くんのなかで、その動きのかたちづくられ方をみているような、動きの魅力、味わい、そしてみんなでずーっとみていくような感覚がすごくいい時間でした」

■じぶん語リレー/十代田さん

続いて、発表したのは十代田さん。これまでこのスタディで経験してきたことについて「楽しいけど、何をやっているのか掴めていない。でもわからないまま寝かせておいたらいつかわかるのかもしれない」と語る。そして「新しい言語を見つけるためのワーク・イン・プログレス」と表紙がついた資料を画面に共有しプレゼンをはじめた。

プレゼンが終わり、メンバーからは次のように感想が共有された。

「遠くの言語、いろんな言語の創発、実験をぜひしてみたい。誰かから誰かへどんどんつないでいきたい。あと、3回転ぐらいしたときに、またさらに新しい言語や発見がありそうで、ときめきますね」

「自分なりに気分が上がる表し方=雄弁であること、自分の選択、それが自分の『言語』。日本語はみんなが話している言葉に忠実なだけだから、私はもっとその人にしかないものが見てみたい」

■わたしと火遊びしませんか?/山田さん

3番目に発表したのは山田さん。

「普段生活のなかで出会っているという感覚がない。出会うとは? 時間や空間、経験、価値観を共有すること? 毎朝同じ時間の電車に乗り合う人とは出会えているのか?」という自らが感じる問いを資料で共有する。「同じ空間に身体はあるけれど、共存していない?→携帯・スマホを見ている人が多い→身体はここにあるけれど、思考はここにはない状態?」「何かしらの見えない境界があるように思う。境界に触れること。境界を越えること。→自分にとって出会うこと」「自分なりの出会い方を考える」と自分なりに問いを深めた経緯をプレゼンした。


自身の問いに応答する手段として、火種=他愛のない小さな遊びの実践、それぞれと火遊びしてみることにたどり着いた。

共有が終わると、メンバーからは次のような感想が伝えられた。

「火種を持った人同士がいつかキャンプファイアしたり、すっごく楽しそうですよね、豊かな時間だなあって思いました。時差が生じる遊びに対しても、どんぐりを埋めるリスのようにかわいいな、と。火のなかの時間と火種がいろんなところで着火していくのが楽しそうで、好きだ~ってなりました。火種をいろんな人と共有しながら1日を過ごせたら、それだけで、豊かな時間になっていく。あと頭の火種が片隅にあるとポンといろんなところが弾けて、わーってなりますね」

「山田さんは『出会うのインタープリター』になれそうだなと勝手に想像しました」

■「下書き」という状態の共有を模索する/鍾さん

最後の発表者は、鍾さん。「ある日を境に声が出づらくなって、コミュニケーションのハードルが上がりました。でも悲観することでもない。だからコミュニケーションについて考えてみようと思ったんです」と鍾さんは語る。続けて「下書きとは何か?」という問いを共有し、誰かに向ける準備行為でありながら、誰にも見せないという意味を内包しているものではないかと仮説を立てる。そんな下書きの状態を共有する方法を模索したノートを画面上に共有した。

「電気をつけないで文字を書く。意外と書ける。それが面白い。暗闇風呂でも以外とわかる。暗闇は怖い場所じゃない。人間の身体で光がなくてもわかることがある。それをみんなで体感してみたい」

「粘土リレーもいい。目隠しじゃなくて、暗い場所にいることが大事。瞳孔があく、目が冴える。その状態で粘土を触り痕跡を残す」

鍾さんからの共有が終わると、メンバーから次のように感想が集まった。

「ときめきがブワッと襲ってくる発表でした。その人のなかから出てきたものを受け取りながら、応答する。ドキドキしてしまいますね」

「下書きを書くことそのものから思いついたプロセスをきれいにまとめていて面白い。体感をみんなでできるか? →触覚の伝言リレー。暗闇のときの身体感覚(目の状態)で変わる」

4人が発表を終え、チェックアウトの時間には「みなさんそれぞれの感覚をもっと一緒に巡ってみたくなりました」という感想がナビゲーターの和田からこぼれた。

後日、あるメンバーの日誌には次のようなことが書かれていた。

「よくわからないものをどうにか共有しようとしているこのスタディも、みんなが『じぶん語』を駆使していて、少しずつ『スタ1語』が生まれているのだろう。3月に向けてそれらをあらわしてみよう、そのあらわしかたは、それぞれの『じぶん語』を並べてみることで『スタ1語』の輪郭が、朧げに見えてくるのではないか、という実験なのだなーと改めて」

「なぜか、感想が言えない。とても楽しかったことは確か。メンバーのみんなの前で実際に生で書けたことは嬉しかった。ああいう書き方をすると、『言葉』として具体的なものを一つ取り出してここに書くことに抵抗を感じるようになってしまった。もっと曖昧でいたい」

さらに、グラフィックレコーダーの関美穂子さんが発表から受け取ったものを含んだグラフィックレコーディングについてお手紙をいただいた。

■全体を通して描いたもの
今回はスタディに初めて参加した私から見て、皆さんが掴もうとしているもの、育もうとしているもの、創り出そうとしているものを抽象化して表現しました。

(描かなかったもの)
・発言や動きの具体的な詳細
・発表者の似顔絵、表情
・きれいに整理された記録

■大塚さん
発表(パフォーマンス)を見て聞いて、受け取った情報から大塚さんが何に挑戦しているかを表現しました。
ポンポンと跳ねるような点線は、右手で描いた時のリズム、ギザギザとした直線は左手で描いた時のリズムです。参加者がZoomの枠から、大塚さんの発表を見ようとする強さや探索感を黄色の矢印であらわしました。
背景の青い粒は、音の粒です。

■十代田さん
十代田さんが何にワクワクを感じているか、を表現しました。それぞれの「じぶん語」がリレーされてつながり、紡がれている様子や、その過程でのお互いの化学反応の熱やパチパチ弾ける様子、そこからまた個のなかで生まれるそれぞれの反応をあらわしました。背景の青い模様は、生まれて繋がり混ざりゆく雲です。

■山田さん
山田さんが主人公で語りかける「面白い遊びのお誘い」を表現しました。
ご自身のなかにある焚き火から、お手紙のように火の粉が飛んでいって、それを受け取った人は顔がない人間型のシルエット(他者)から、個別の誰か(他人)になる。火の粉がチリチリと飛んでいって、伝播していく面白さをあらわしました。

■鍾淑婷さん(すーちゃん)
4つのやってみたいことに共通している、ショウスーティンさんが何に惹かれているか?を表現しました。
私たちは「何かを取り込んで、仕上げて、外に見せる用に準備したわたし」同士でコミュニケーションしている。それが例えるなら身体の外側だとすると、食べたものを消化している、消化管どうしでコミュニケーションして消化中のドロドロの体液同士でコミュニケーションする面白さに惹かれていることかもしれない、と受け取りあらわしました。背景の青い模様は、そんなコミュニケーション中のぐちゃっとしたものです。

メンバーだけではなく、そこにいる人それぞれがなにかしらのかたちで表現することになった今回。何らかのかたちにされることで、触れることができる他者の感覚、わたしの感覚。その余韻に浸りながら、今後それぞれが社会に投げかけていくであろう問いへの期待が高まった。

Text=木村和博