2020.1.18 (土)

第10回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

考えていることの作品化に向けて

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記録係の堀切梨奈子です。スタディ2、第10回目は1月18日(土)12:00から、ROOM302で行われました。

年が明け、スタディで考えてきたことをまとめる時期になってきました。まずは居間 theaterから、年度末に行なう試演会について「スタディでリサーチしてきたことを客観的に捉えるために、レクチャーパフォーマンスという形式を採用するのはどうだろう」という提案。そして、客観的に捉えるための試みとして、スタディの変遷を6つのキーワード、ミュンスター・彫刻・公共・パフォーマンス・東京・工事を用いて語ってみることに。

1997年に始まったミュンスター彫刻プロジェクトには“ミュンスター・彫刻・公共”という特徴があるが、2017年に現地へ足を運んでみると“パフォーマンス”も存在しており、10年後・2027年のミュンスター彫刻プロジェクトにおけるパフォーマンス作品の可能性を探るようになった。そのことを『東京プロジェクトスタディ』という枠組みで考えるにあたり“東京”というキーワードが加わった。2018年度の報告会では“東京における公共の彫刻”を考えたスタディのプロセスを“パフォーマンスという体裁”でみせた。今年は新たに“工事”が加わり、いま、我々は“公共の工事”を“彫刻的なパフォーマンス”に見立てようと試みている。

限定された言葉の組み合わせで説明してみると、その時々にどこに視点を持っていたのかがわかりやすくなりました。また、佐藤慎也からは「来年度以降、なにかを見せるための手段として“パフォーマンス”を使うのではなく、“パフォーマンス”そのものを“公共・彫刻・東京”などのキーワードと同じように考えることができないか」という提案もありました。

続いて、スタディを詳細に振り返りながら試演会で扱う内容を検討します。フィールドワークを通してみんなで彫刻をみる楽しさに気づいた第1回。“パフォーマンス”をキーワードに、劇場外の演劇と美術のパフォーマンスについて考えた第2回と第3回。ストリートアートをきっかけに“日本における公共”という視点を得た第4回。小田原まで足を伸ばしてみんなで美術の文脈におけるパフォーマンス作品をみた第5回。その後重点的にリサーチを行う“工事”が浮かび上がった第6回。手探りながらも工事のリサーチを始めた第7回。積極的に見学をさせてくれる工事現場に、美術と演劇のパフォーマンスの交点を探った第8回。工事を“委任されたパフォーマンス”に見立てた時のフェアトレードについて考えた第9回。

「美術では、一人のカリスマ(=アーティスト)が作品をつくる時代から、人や社会を巻き込み作品をつくる時代に変化したことで“委任されたパフォーマンス”という考え方が生まれたが、演劇は常に集団創作であり、誰かと一緒につくっている」「批評家はアーティストが作品に込めた意図をアーティスト以上によく読み解ける人だったけれど、多様な声を持つ集団でつくった作品は批評が難しいようだ」「多様さの担保とその評価を同時にすることは難しい。評価しなければいけない行政と、多様な方向にいくアーティスト。美術館はその間にあり、ゆらぎのタイミングなのかもしれない」「作品に対して強度のある/なしを感じることがある」「強度は“重心”とも捉えられないか。面白い作品やアートプロジェクトにはどこかにちゃんと“重心”がある気がする」「パフォーマンスはある種の緩さが強度に変わることがあると思う」など、言葉の定義はゆらぎながらも、これまでのスタディをそれぞれに消化しながら議論が行なわれました。

また、重要なキーワードであるパフォーマンスについて「試演会で行おうとしている“パフォーマンス”は演劇的なもので、そこで主題として扱おうとしている“パフォーマンス”は美術的」「ふたつの異なる“パフォーマンス”を包み込むような概念がみつかれば、それが強度になるのでは」という議論がされたり、今年度リサーチを重ねた工事について「まちなかの“彫刻”を何に見立てようと誰も傷つかないが、“工事”を使うことには委任されたパフォーマンスと同じような問題がある気がする」「工事には、上演時間が長い、ストリート、東京、というポイントがある」などの言葉が交わされ、気づけば開始から4時間が経過。

長丁場の振り返りを終え、今後はメンバーが各々テーマを持ち、ナビゲーターと面談を重ねながら、考えていることの作品化に挑戦することに。また、試演会全体に何かしらのフィクションを重ねることで、お客さんが複数の作品をオムニバス的に受け取りやすくすることも決まりました。
これまでは、同じ場所に集い、時間と考えを共有してきましたが、少しの間、個別での思考と作業が続きそうです。後日、持ち寄ったアイデアが、試演会というひとつの場でどのようなアウトプットになるのか…。約半年間のスタディを経て、ついにクリエーション期間が始まります。

Text=堀切梨奈子