2020.3.1(日)

試演会

場所:エキラボniri

試演会『WORK IN PROGRESS』

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記録係の堀切梨奈子です。スタディ2、今年度の締めくくりとなる試演会は3月1日(日)16:30から、エキラボniriで行われました。半年間のスタディと約1ヶ月のクリエイションの集大成となる試演会ですが、当日は新型コロナウイルスの流行に配慮するために一般公開は行わず、関係者のみ10名ほどの観客を招いての上演となりました。

会場のniriは、西日暮里駅の高架下にある小さなイベントスペース。電車が通ると一緒に振動するような立地です。部屋の2面は大きなガラス窓になっており、道路に面したガラス窓からは、道行くひとや車の流れが見え、もう1面の窓の外はコンコース工事のため仮囲いに囲まれ、工事やウイルスに関する注意喚起音声が会場に漏れ聞こえてきます。

佐藤によるスタディ2の概要を説明するレクチャー『前説』、山崎によるパフォーマンス『つなぎ』の後、ラジオの公開収録仕立ての『WORK IN PROGRESS』が始まりました。この1ヶ月間でクリエイションした昨品は、工事中、進行中の作業という意味である『WORK IN PROGRESS』のコーナーとして次々に登場。窓際に設置された小さなパーソナリティブースに座った稲継と宮武が全体の進行、工事作業員に扮した東と山崎はコーナーごとの場面転換をしていきます。

最初のコーナーは、映像作品『ひな散歩』。日常生活では立ち止まることの少ない工事現場を観察しながら、舗装タイルがめくられて露わになった地面や、夜間工事用の照明などに着目します。次の『うらら想像美術館』は、会場に投影された工事現場の写真の見かたを、まるで作品を説明する学芸員のように解説していくパフォーマンス。解説といっても、それは全てが想像。カラーコーンによる領域の分け方や、注意を促す掲示物など、工事現場のさまざまな要素に対して自由に想像を巡らせていきます。続いて『みんなの工事〜体調不良編〜』は体調不良の主人公が自分のからだの細胞が働くことと、町の工事現場で働くひとがいることを重ね合わせ、普段当たり前にある自分の健康やまちの風景は、どちらもだれかの働きによって存在していることに気づく、というパフォーマンス。映像作品『黄色いパトランプ』は、工事現場の穴から異世界に行ってしまう短編SFストーリー。『おたよりコーナー〜その1〜』では、スタディマネージャーからの手紙をきっかけに、これまでのスタディの流れをスライドと共に振り返りました。
休憩をはさんで『KABEI BINGO!』は、工事に関する質問に答えていくと、それに応じたカードの数字に穴を開けていくことができるという、観客参加型のビンゴゲーム。ビンゴになると、壁井が撮影した工事現場のかっこいい写真を使った景品(カレンダー、クリアファイル、ポストカードなど)をもらうことができます。『みんなの工事〜路上パフォーマンス編〜』では交通整理をする工事作業員の動きをきっかけに、かつて、同じ場所で行われていた路上パフォーマンスを主人公が思い出し、工事とパフォーマンスの類似性に気づく、というパフォーマンス作品。路上パフォーマンスの回想シーンでは、スタディメンバー全員参加で、演奏とダンスが行われました。『おたよりコーナー〜その2〜』では、東京を駆け抜けてきた手紙の差出人が会場でおたよりを読んでくれるというパフォーマンス。最後の『NANASEカレンダー』では、東京オリンピックのアドベントカレンダーとして、7月1日から東京オリンピックの開会式が予定されていた7月24日まで、24日分の、東京オリンピック開催に伴って生まれる東京のポジティブな変化や出来事がパフォーマンスのなかで発表されました。

上演が進むにつれ、『KABEI BINGO!』でビンゴカードにあける「穴」が、ショートSF『黄色いパトランプ』で異世界と繋がっていた「穴」とリンクしたり、会場に繰り返し漏れ聞こえる注意喚起の「申し訳ございません」という音声と、『みんなの工事』や『うらら想像美術館』で取り上げられる「申し訳ございません」というワードがシンクロしたり。『おたよりコーナー〜その2〜』に登場するパルクールというスポーツが持つ都市を上書きしていくような性質と、『ひな散歩』で紹介されるまちが工事で上書きされていく様子や、『NANASEカレンダー』でオリンピックのためにアップデートされていく東京の様子が重なっていく……。など、それぞれのコーナーは一見すると別々の作品でありながら、だんだんと作品同士や試演会が行われている『東京』という場所に重なる部分が見えてきて、『東京』『公共』『彫刻』『パフォーマンス』『工事』についてスタディ2が思考してきたことが、ぼんやりと浮かび上がってきたように感じます。スタディ2が昨年度から掲げている『東京彫刻計画』という概念は、もしかすると『東京』自体を彫刻として捉えつつあるのかもしれません。全てのプログラムが終了したのは18:00を過ぎたころ。90分をこえる超大作でした。

『WORK IN PROGRESS』という言葉が示すように、未だ進行中であるスタディ2の思考と技術と対話。スタディと日々の生活を通して考えた『東京』『公共』『彫刻』『パフォーマンス』『工事』はこれから、スタディ2という集まりにとって、それぞれのメンバーにとって、そして試演会を見た観客にとって、どのように更新されていくのでしょうか。今後の展開への興味も残しつつ、今年度のスタディ2の活動は幕を閉じました。

Text=堀切梨奈子