2020.9.27(日)

第2回

場所:ユートリヤ すみだ学習生涯学習センター

すみだ向島EXPO 2020をめぐる

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第2回目のスタディは、居間 theaterも作品を出展しているすみだ向島EXPO 2020を見学しました。

すみだ向島EXPO 2020は、“隣人と幸せな日”をテーマにした“体験型芸術祭”です。墨田区曳舟エリアに点在する約40箇所の会場のうち、多くは長屋や元店舗などの古い建物で、来場者は地図を頼りにその会場にある“アート”の展示を目指します。
会場間を移動するために歩く木造住宅密集地域特有の細い路地には、比較的最近建てられた住宅も入り混じり、芸術祭をめぐりながらも、新陳代謝していく気配を孕んだ“まち”を感じ、出展作品である屋台を囲みながら偶然居合わせた人と他愛もない話をしたり、滞在制作をしているアーティストや会場の店主に作品やこのまちについて教えてもらいながら、自然と“ひと”と出会う。
スタディメンバーはまちや建物の大きさに合わせるように3〜4人の小さなグループにわかれて見学をおこないましたが「作品よりもまちなみや建物の方が強く印象に残っている」「まち全体に民芸的な魅力を感じた」「長屋の中庭が集いの場になっていた」「古い家が残っているまちなら、人がまちを選ぶのではなく、まちが人を選ぶってこともあるのかなと思った」といった感想もあり、それぞれの興味や気づき、偶然の出会いから、この芸術祭の三本柱である“まち・ひと・アート”を体験していたことが伺えます。

約半日かけた見学の後、夜にはこの芸術祭の代表である後藤大輝さんと芸術監督の北川貴好さんをゲストに招いてのアフタートーク。
すみだ向島EXPO 2020には「古い、汚い、危ない、を理由に取り壊される建物と、それと共に失われてしまう文化を、引き継げるものにしていきたい」「今までの活動と、それによってできたネットワークを知ってもらいたい」という思いがあること。2001年に開催された《アートロジィ向島博覧会2001》から20年を経た、いまだからできる博覧会を、あらためて「向島で制作活動を行い、まちのことをわかっている人たちと開催したい」と思ったこと。また、それはミュンスター彫刻プロジェクトに重ねて考えると20年という「周期的なものかもしれない」こと。居間 theaterがつくる作品の「パフォーマンスでもなく、インスタレーションでもない佇まいがおもしろく、すみだ向島EXPO 2020のコアになるような作品をお願いしたい」と思い、声をかけたこと。まちや住民が違和感を感じない来場者数として、芸術祭全体に30分ごと8人受付という定員を設けたこと。
この芸術祭にまつわるさまざまなエピソードを知ることができました。

さらに、居間 theaterの作品《だれかの いま/シアター》と北川さんの作品《宿の家》について話をすすめるうち、それぞれの作品に対する時間感覚の違いがじわじわと明らかに。
北川さんの《宿の家》は、鑑賞者が一晩、長屋に宿泊し、翌朝までさまざまな体験をするもので、1組の鑑賞時間は15時間以上に及びます。北川さん曰く「この長屋に宿泊し、こんな体験をしてもらいたい」という“事実”に対するプロセスに長い時間を要しているが、あえて長時間を設定しているわけではないとのこと。対して居間 theaterの《だれかの いま/シアター》は、劇場に見立てられた旧米店の2階で、鑑賞者は受付で渡された台本と、劇場にあるカセットテープを手がかりに、客席と舞台(に見立てられた空間)を移動しながら一人で過ごす、という作品。その制作では「先に時間をつくることを考え、あとから手順やプロセスを考えた」そうです。両者の作品には、形式やそれに伴う鑑賞者の行為として似た部分(今回の場合は、1組ずつ、比較的長い時間をかけて鑑賞すること)があったとしても、“作品が生み出すものに対する捉え方”に違いがあるのかもしれません。今回の気づきは、スタディ開始当初からぼんやりと考えている、美術と演劇におけるパフォーマンスの違いを考えるための、ひとつの糸口となっていくのでしょうか。
次回からは、ゲストアーティストを招いてのワークショップがはじまります。

Text=堀切梨奈子