2020.9.26 (土)

第3回

ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

ハードルを越えるための「態度」を探る

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第3回は、対面でのスタディを初めて実施。
出席者は口々に「やっぱり対面がいい」「広々としていて楽」などと空間を共有できる喜びを分かち合った。

この日は、次回でゲストに迎えるライター金村詩恩さんによる雑誌『現代思想 2020年10月臨時増刊号』寄稿文を、スタディ参加者が順番に声に出して読む輪読をした。
寄稿は、人種差別反対を訴えるブラック・ライブズ・マター運動(以下、BLM)をテーマにした特集号に掲載された文章。

日本プロ野球界のご意見番として活躍する在日コリアンの大御所。
元イタリア代表の黒人サッカー選手。
映画「ゴッド・ファーザー」。
白人警官に殺害された黒人男性ジョージ・フロイド。
コリアン・ライブズ・マター。

在日コリアン3世の金村さんが日常で感じたり見たりした、人種や民族などをめぐる人々のさまざまな思いを、自身の思索と絡めて文章にしたものだ。

副題に「自己変容を通して、背景が異なる他者と関わる」を掲げるCross Way Tokyoの参加メンバーにとって、BLMは、自分がどう他者と対峙するのかを考える上で無視できない。

輪読では、ひとりひとりが音読しつつ、意味を咀嚼(そしゃく)し、金村さんの意図などを推察していった。これが、なかなか難しそう。

というのも、金村さんの文章は、主義主張や考えをしたためた類いのものではなく、日常を淡々と描いたもので、読み手が自ら何かを感じ取ろうとしない限り、「ただの日記」に見えてしまうかもしれないものだったからだ。

読み終えてから、みんなで感想を共有し合った。

例えば、寄稿の中には、在日コリアンが、ゴッドファーザーのヴィト・コルレオーネを、異国への移住を余儀なくされた同志のような存在として見ていることを示唆する箇所があったが、その点については、「ゴッドファーザーと在日コリアンは全く関係ないと思っていたが、当事者たちにはそういう見方があるんだな」といった声や、「ゴッドファーザーに共感し、感情移入して繰り返し見る心理は正直わからない。でも多分、それが自分たちのアイデンティティを確認する作業になっているんでしょうね」などの声が聞かれた。

また寄稿に出てきたコリアン・ライブズ・マター(KLM)という言葉に関連して、なぜBLMは日本でも盛り上がったのに、身近な在日韓国人への差別解消に向けた運動はうねりにならないのか、といった議論も。

台湾出身の参加メンバーからは、「(2015年に)フランスで同時多発テロが起きた時、台湾人はみんなSNSのアイコンをトリコロールに変えたりしたのに、東南アジアの国で同じことが起きても、全然気にしない。だから身近な問題かどうかは関係ない気がする」と語った。

大学生のメンバーは「BLMは、かっこいいムーブメントになっていて、表層だけを取り入れやすい運動。でもKLMに関しては、在日韓国人差別は自分たちが加害者の側にいる意識があるから、単純に口に出せないのでは」などと考察。ウェブマガジン編集者のメンバーは「在日コリアンが置かれたいまの状況の背景にどんな歴史があるのかを明るみにすることは、メディアの役割の1つだと思う。(差別がなくなって)在日コリアンの存在が日本に馴染んできたのではなく、隠されてきた」と話した。

また寄稿には、在日コリアンの人々がことごとくあいさつがわりに「メシ食ったか」と相手に声をかける場面もあり、参加メンバーたちが「あれはどういう意味なんだ」とコリアンカルチャーにおける意味合いを予想。「人は誰しも食べていかないといけない。だから、自分はあなたのことを気にかけているよと伝えているのでは」といった意見が出た。

続いて、今後のスタディで何をやりたいかについても議論。
グループに分かれてアイディアを付箋(ふせん)に書き出し、それらを集めて「勉強」「体験」「表現」「共有」にジャンル分けした後、自分が実現させたいと思ったものに名前を書き込んでいった。

例えば勉強では、「もっと在日コリアンについて学びたい」「関連書籍やイベントを気軽に共有できるといい」などの声が。

体験は、「まちを散歩する」というアイディアに多く票が集まり、「ブラジル人コミュニティのある群馬県大泉町をぶらついてみたい」「御徒町にもいろいろなコミュニティがあるらしい」などと提案し合っていた。

対面が叶わなかったことで鬱憤(うっぷん)が溜まっていたのか、第1回、第2回と比べてこの日は議論がエネルギッシュで、今後スタディがどう展開していくのか、期待を膨らませているような参加者たちの表情が印象的だった。次回は、待ちに待った屋外でのフィールドワークだ。

Text=鷲見洋之