2019.2.24 (日)

第9回

場所:パズル浅草橋

パフォーマンス仕立てで大団円

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オーソドックスなプレゼンではなく、レクチャーで得た気づきや学び、都内に点在する彫刻を巡り歩いた経験を、見ている人たちが追体験をしているような発表にしたい。その想いを元にプロットを練り上げ、構成を組み立てていったパフォーマンス仕立ての発表。最終的に、ミュンスターとの出会いから、スタディの立ち上げ、各ゲストのレクチャーや対話で学んだこと、架空のアートプロジェクト『東京彫刻計画』とフィールドワークでの気づきまでを全10幕でまとめた。新劇、TED、現代口語演劇、ラップ……各幕にはそれぞれ異なったモチーフを用いることで、いろんな温度が混ざる発表となり、それは、ひとつの彫刻をみても、それぞれが異なった感想を持つことにも似ている。ナビゲーター、メンバー、スタディーマネージャー全員がパフォーマーとなり、パワーポイントによるスライドから、映像、音響、照明まで、場のスペックをフル活用した、このスタディならではの発表となった。

トップバッターでの発表であり、ただの報告ではなさそうだということから、最初は堅い雰囲気であった会場も、次第に発表を見ながらメモをとる人もでてきた。

最後のフィールドワークを終えてから本番に至るまでの約1か月間、頻繁にミーティングと稽古を行ってきた。Google Map上にプロットした『東京彫刻計画』の出品作にあたる177の彫刻の写真と情報をみながら可視化の方向性を探ったり、それぞれのシーンの演出方針と配役を決めたり、黙々と発表に必要な映像やスライド、地図の作成をしたり、各シーンの稽古を行ったり……。報告会当日は、午後から始まる本番に向けて午前中から会場づくりと場当たりを行うなど、調整は直前まで続いた。発表に向けたそのプロセスは、ナビゲーターとメンバーとスタディーマネージャーの3者が、共にプレゼンテーションというひとつの作品制作を行っていたとも言えるだろう。

芸術祭とは何か、彫刻とは何か。その問いに向かい合った5か月間の成果として、パフォーマンスは「このスタディは必ずしも一つの答えは導きだしていない。それぞれの参加者の視点から、彫刻に興味をもち、彫刻を媒介として、それぞれが思考しているのです。可能性は無限大。刮目せよ! 旅はまだ始まったばかりなのである」という台詞で締めくくられた。

Text=堀切梨奈子 Photo=︎川瀬一絵