2019.1.13 (日)

第5回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

年末年始に「聞いた」ことを持ち寄る

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前回の活動日の後に開かれたオープンラボデイでラボの名称を決めることになり、参加したメンバーの意見を集約して、「かたつむり」に決定(当初は「東京かたつむり」という名称も採用されたが、後日「かたつむり」に集約)! また年末にはスタディマネージャーの佐藤李青と瀬尾夏美から、メンバー宛てにこれまでの振り返りと、今後の動き方についてのメールが送られた。佐藤は「頭のなかが“チーム”で思考するような感じになっているというか……。その意味で日常のなかで誰かに(思いもよらなかったことを)聞くことが自然と増えているように思います」という、「聞き方」の変化を綴り、瀬尾は「聞くという営みは日常的でごく当たり前のものですが、だからこそ、このラボを使って、ひとつチャレンジングな実践をしたい、してみたらどうだろうと考えています。それはとても単純なことで、ともすれば受動的なものと捉えられがちな聞くという営みを、主体性を持って行うということです」とした上で、普段とは違う時間の過ごし方ができる年末年始に、メンバーがそれぞれの方法で“聞く”を実践してきてほしいと強調した。

年が開けて最初の活動日。まずは各々が“聞いてきたこと”を10分程度話してもらうことに。実家に帰省した際に聞いた話や、数年ぶりに再開した友人から聞いた話、いつもなら足を運ばない場所で聞いた話、同僚や従兄弟、親戚から聞いた話……。年末年始ならではの体験をベースにした報告が続いた。
その上で、ただ単に話して終わりではなく、報告をするメンバーとは別のメンバーが板書を担当し、ひととおり話し終えると、その話がどのように聞かれたかをフィードバック。さらに、もう一度一人になる時間をつくり、何について自分が話したのかを書き出してみるという流れを設けた。他者の反応を受け止めて自分が発言した内容を再度考え、そこから抽象的な問いを立てていくという流れを経たことによって、メンバーからは「人が発言をする上での背景にあるものは何か」「物事に対するラベリング」「境界線をどうなめらかにしていくか」といった問いが生まれた。

その後、全員で会話を続けるなかで、話を聞くときの態度として「聞き癖」があるといった指摘や、この場に話を持ってくるときには段階を踏んでプレゼンテーションを行っているという気づき、あるいは話題が一つの大きなトピックに紐付いている場合は抽象度の高い議論ができるけれどが、プライベート性の強い話題については、どんなにおもしろくても消化をするための時間がある程度は必要といった感想が出てきた。
瀬尾からは、「人の話を聞くと“あたってしまう”ことがあるけれど、そのときのセーフティーネットとしてこのラボを意識して、使うというのも手」「東京のような都市の場合、知らない人の話を聞きに行くことのハードルが高いと、この半年で実感したけれど、このラボを利用するようなかたちで“聞く”身体のバリエーションを持てればと思う」といった言葉があった。

また、2月の報告会で何をやるかについても議論。「聞く」を主体としたスタディなので、実践の報告を考えがちだが、それよりもナビゲーター、ファシリテーター、スタディマネージャー、メンバーの全員がどのようにラボのイメージを共有したのか、共通言語をどのように持つことができたのかという仕組みづくりのプレゼンテーションを主にしたほうがいいのでは、と瀬尾。ラボの仕組みの再現、再演を行うというところまで一旦決まり、次回活動日にその詳細を詰めていくことになった。

Text=高橋創一

関連資料

第5回についてのお知らせメール
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差出人:佐藤李青

2018年12月29日(土)

件名:第5回のお知らせ

みなさま

こんばんは、佐藤李青です。
年末も押し迫っておりますが、いかがお過ごしでしょうか?

小屋さんから報告いただきましたが20日のオープンラボデイの盛り上がりや、
22日近辺に仙台へ行かれた方が多かったという噂を聞いております。
「かたつむり」というこれからの活動名もこれまでの流れを汲んでいて、いい感じですね。

さて、師走にかまけて次回までの動きをお伝えしそびれておりました。
ひとつは、次回の「ラボ通信」掲載用の素材のことです。
前回A4のペーパーに手書きした図のスキャンデータをお送りください。
その際に400字以内で簡単な解説テキストも添えていただくようお願いします。
この2点を、次回の一週間前、【2019年1月6日(日)】までにお送りください。

もうひとつ、次回は1月13日(日)が活動日になりますが、
時間は13〜18時を予定しています。場所はROOM302です。
話を聞いてきたことなどを共有し、議論できればと思います。

前回は、瀬尾夏美さんから改めてスタディの趣旨のふりかえりがありましたが、
「チームで思考する」という言葉を振り返ってみると、
みなさんとあーだこーだとさまざまなトピックを話し、共有することで、
いつの間にか自分のなかに10数人分の視点が入り込んでいるように感じることがあります。
これまで気にならなかった話しが聞こえてきたり、
誰かと話しをするときに出すトピックのバリエーションが増えたような気がします。
頭のなかが「チーム」で思考するような感じになっているというか……。
その意味で日常のなかで誰かに(思いもよらなかったことを)聞くことが自然と増えているように思います。

と、年末っぽく少し振り返ってみたら連絡事項よりも長くなってしまいました。
次回もまたみなさんと話しができることを楽しみにしています。

では、よいお年を!

第5回年末のご挨拶メール
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差出人:瀬尾夏美

2018年12月31日(月)

件名:年末のごあいさつ

かたつむりのみなさま

年の瀬ですね、ということで、ちょっとご挨拶です。
本年はとてもお世話になりました。

ラボが始まってまだ4ヶ月ほどですが、先の佐藤李青さんのメールにもあったように、月に一度か二度、みなさんと長い時間をかけて会話をしたり、一緒に話を聞く場を持つなかで、いつの間にかその場で現れた関心や誰かの語り方が、その後の自分の生活にも関わってくるようになったと感じています。
たとえば全然別の仕事の打ち合わせの最中に「あ、これはあれだな」と気づいて、相手にひとつ多く質問をしてみたり、いままで読まなかった記事を読んでみたり、どこかで見聞きしたことをラボに持ち帰ってみようと想像したり。
ひとつひとつはとても小さな事象ですが、自分の身体の中に“かたつむりな耳”を持つという感覚は、広く複雑な東京をどのように歩けるのかと考えた時に感じた“どうしようもない途方もなさ”を少しほぐしてくれている気がしています。
ここ数日の間、ラボの数人が仙台に来てくれたのですが、似たような感覚について話してくれる人もいて、おお! となりました。
今きっと、それぞれの身体が変容して、「チームで思考する」ということが始まりつつあるのだと感じています。
もしかすれば、それはすこし面倒なことでもあるかもしれませんが、ひとりではできないことをやってみようと思わせてくれたり、日常生活の人間関係では届かないような思考へと導いてくれたり、誰かに会いにいく景気付けになったりもしてくれるのではと想像しています。

さて、このラボでは「話を聞く」ということをひとつの軸にしています。
今までラボの活動の中でも、早乙女勝元さんや山本唯人さん、田中沙季さんにお話を伺ったり、町歩きをしたり、ワークショップをしたり、とにかく長い時間おしゃべりしたり、議論のようなものをしたり……と、さまざまな形の“聞く場(もとい語る場)”を持ってきました。
ここでひとつ確認したいのは、聞くという営みにはたくさんの姿があるということです。
誰かにアポを取ってインタビューするのもひとつですが、私たちはおそらく、そうではない“聞く場”を無数に知っていて、実践しています。家族や友人との会話も、SNSでのやりとりも、シンポジウムに参加するのも、きっとそのひとつです。
「聞く」という営みは日常的でごく当たり前のものですが、だからこそ、このラボを使って、ひとつチャレンジングな実践をしたい、してみたらどうだろうと考えています。
それはとても単純なことで、ともすれば受動的なものと捉えられがちな「聞く」という営みを、(意識的に)主体性を持って行なうということです。
一見簡単なことですが、これだけでおそらく、聞こえてくること、身体に入ってくることが変わるし、それに対する自らの応答も変わる。これって結構すごいことだと思います。
だけれど、前述したように、おそらくすでにみなさん自然にやっていることでもあります。
また、副題になっている「知らないだれかに話を聞きにいく」の、“知らない”という言葉にもさまざまな捉え方がある気がしています。
たとえば、普段一緒に生活している家族だって、いつもと違う切り口で質問を投げかけてみれば、その人が“知らないだれか”であったことに気づく、なんてこともあると思います。

“かたつむりな耳”を持っていることで、いつもと違う聞き取り方ができる。
ラボの存在を使うことで、いままで聞きたくても聞けなかったことを聞いてみる。
または、知らない人に出会いに行ってみる。
かたつむりの人や別の誰かが関心を持っていた事象について、自分が聞きに行ってみる。
関心の重なっている人と一緒に出かけてみる……。
ぜひラボを使って、それぞれの“聞く”を実践してみてもらえたらと思います。

長々書きましたが、1月のラボでは、それぞれがそれぞれの方法で聞いてきた話を囲んで、またじっくりとおしゃべりができるようにと思っています。
その際に、ちょっと硬い手法になりますが、ひとりひとりが聞いてきたことを約10分程度お話いただこうと考えています。
まだ聞く準備ができていない! という方もきっといると思いますが、
できるだけ、ぜひ! えいや! といきましょう。

それでは、かたつむりな自分を抱えつつ、新年を迎えちゃいましょう。
また、来年!

瀬尾夏美