2019.1.31(木)

第8回

場所:Peatix Japan

公共空間で音楽を響かせるために

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このスタディには「公共と音楽」という軸があるが、今回は「公共空間における音楽の可能性」という直球のテーマについて、Peatix Japanの白勢竜彦さん、公共R不動産の飯石藍さんをゲストに迎え、現在音楽とのかかわりの中で「公共」はどのように問われているのか、言葉を交わした。

最初はお二人の自己紹介、活動紹介からスタート。2011年にサービスを開始したPeatixは、誰でも簡単にイベントのチケット販売や集客を行える、日本最大級のイベントプラットフォーム。19のカテゴリに分けられ、常時6,500件以上のイベントを扱う。白勢さんはウェブ広告プラットフォームの会社に勤務していたが、2014年に転職して入社。現在はコミュニティ・マネージャーとして働いている。Peatixは日本で起業したが、アメリカに本社を持つ。「国際的なプラットフォームを目指しています」と白勢さんが言うように、現在は27カ国でサービスを提供中だ。
また、チケット販売を扱うだけではなく、コミュニティのプラットフォームづくりを強化していこうとしている。「電子チケットを利用してイベントに足を運び、イベントからコミュニティになる。そもそもイベントのいいところは、強い体験があり、周りの人と共有でき、つながりができるところだと思います。“イベント”というと仰々しいかもしれませんが、ただの飲み会だって考えてみればイベント。簡単に誰でもできることなんです」という白勢さんは、会社の仕事以外にも映画祭に携わるなどの活動もしている。

二人目のゲスト、飯石さんはフリーランスとして仕事をしているが、主に二つの柱を持っている。一つは使われなくなった、もしくは今後使われなくなる公共空間の情報を集め、それを使いたい民間のプレーヤーや利用者とマッチングをする媒体、公共R不動産のコーディネーター。もう一つは池袋のグリーン大通り、南池袋公園を利用したイベントを企画するnestという会社の役員職だ。「ディレクターの立場で全国のいろんな事例を見てまわり、公民連携、リノベーション、まちづくりのプロジェクトにかかわっています」という飯石さん。その中で気づいたこととして、「一番大きなまちの大家は公共。なので、ちょっとでも公共の空間を身近に思ってもらえる企画をつくっています」と説明した。
また、これまでの社会では計画をする、つくる、使う、という流れで空間を設計してきたが、人口減少社会においてはこのプロセスが逆になり、使う人たちがいて、その人たちの発想でリノベーションを含め、必要最低限のものをつくって計画する流れになっていかなければいけないと思っている、と強調。そのため、行政はもちろんのこと、使い手となる民間の人たちとのつながりがますます大事になってくると語った。
続けて、公共空間を使うにあたり「社会実験→暫定利用→民間提案→民間貸付」の4つのステップがあると提示し、それぞれについて解説。日本の公共空間での音楽や表現活動については、基本的に申請をして許可が出れば使用でき、東京都が大道芸人を公認するヘブンアーティストのような実例もあるが、小さな表現の場がもっとあったほうがいいと述べ、他人に迷惑を及ぼす行為ではなく周囲を巻き込んで一緒に楽しめるようなものにできないかといい、その例として台湾の公園で踊る人たちや、ドイツの公園でのカラオケ大会の映像を流しながら意見を交換した。

休憩を挟んで後半は、公共空間で音楽イベントを開催することのハードルとして、清宮陵一が蓮沼執太のライブを南池袋で行おうとして頓挫した話題から、誰が公共空間での決定権を持っているかといったことや、避けられないクレーム問題について議論。飯石さんは「小さい実験からじわじわ広げていくしかない。行政の人を現場に連れて行くのも手」といい、大内伸輔は「地道にかかわり続けていると変わる瞬間がやってくる。いかに共犯関係をつくっていくかですよね」と話を受けた。

最後に、飯石さんは「公共は本来、表現したい人が自由に表現できるもの。見えない自治みたいに、空間を自分のものだと思って試すのが当たり前になるようにやっていきたい」と述べ、白勢さんは「どんなミュージシャンなのか知らないとライブになかなか行きづらいけれど、そのハードルを壊していきたい。Peatixで勧められたから、あるいは当日券が安いから、といったような理由で、もっと軽いノリで足を運んでもらえるようになりたい」と目標を語り、閉会。
イベントとコミュニティの接続、公共の概念の定義など、専門性の違う立場から見た「公共と音楽」の現在形を俯瞰して考えることのできる時間だった。

Text=高橋創一