2018.11.14(水)

第4回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

フェスという形式の未来像

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2006年から毎年6月上旬に長野県木曽郡木祖村で開催されてきた野外フェスティバル『TAICOCLUB』。2018年の開催をもって終了となったこのフェスをオーガナイズしてきた安澤太郎さんをゲストに迎え、これまでの展開と今後の目論見について伺った。

大学卒業後、モデル事務所に勤めながらTAICOCLUBの立ち上げを行った安澤さん。オールナイトのフェス会場として、一晩中音を出しても問題がない環境を探す中で見つけたのが、人口3,000人に満たない木祖村だ。場所を借りる上で、地元の人たちと協力しすぎてしまうと変化が起こりにくいだろうという感覚があったので、自分たちがやりたいことをやった上で、地元側と距離を少しずつ詰めていくことを意識したと語る。
また、これまで大切にしてきたのは、お客さんが自由に過ごせる環境をつくることや、アーティストの要求をなるべく通すことだという。「それと同時に心がけてきたのは、効率的にしすぎないということ。たとえば旅行に行ったとき、淡々と過ごした時間のことってあんまり覚えていないと思いますけど、パスポート落としちゃったり、お金が足りなくなりそうだとか、そういう困難な状況になったときのことって覚えていますよね。それと同じで、フェスも便利にしすぎない、不満がある、そういったものをなるべく残すようにして運営してきました。ある種毒を入れることで、みんなが問題に向き合って乗り越えていったり、解決することが大事なので。不満を言ってそれが通るだけになると、自分で自分を窮屈にすると思うんです」。
TAICOCLUBのほかにも、2013年は渋谷の路上で行われるフリーパーティー『渋谷音楽祭』、2016年には佐賀県武雄市での『MABOROSHI FES by taicoclub』を手掛け、2014年から17年まではサンリオピューロランドでのハロウィンパーティー『PINK sensation HALLOWEEN PARTY』のオーガナイズもしてきた。そうしたなか、だんだんと自身のフェスについての考え方が変わってきたという安澤さん。「TAICOCLUBについては、この形態でできることはやれたと思えた。13年やったからこそできる次のことをやりたくなりました」と言い、フェスというものが消費をする非日常の場になっているのではないかという疑問を感じ、日常(ケ)の中にフェス(ハレ)を入れていきたい、地域にとっても、数日間に大量の人が来るよりも、常にいろいろな人が訪れてくるほうがよいことなのではないかという思いもあったと語った。

休憩を挟んで、後半は「音楽に関わる役割」に関するワークを行った。世界全体を眺めると音楽産業の売上が伸びているが、日本のメインはパッケージ、アメリカのメインは配信といったような構造的な問題を指摘した上で、音楽とどのような関わりや、役割を持つ人がいるのだろうかという問いを立てた。
メンバーは、思いつく限りの役割、プレーヤー、肩書などを付箋に書き出し、「実践—消費」を縦軸、「社会関係活動—経済活動」を横軸として、四象限の中にマッピングしていく作業を行う。これによって、社会関係活動に位置するプレイヤーが比較的少なく、それはまだ職業名になっていない職能なのではないかという声や、楽器をつくる人は経済活動ともいえるが、前回ゲストの和田永さんの場合は社会関係活動としても考えられ、ある立場が変化しつつもう一方に活用できる状況もあるかもしれないといった意見があがった。

最後に、これから安澤さんはこれからやりたいこととして、従来の音楽フェスのモデルからの脱却を図り、「自分たちの場所を持ってアップデートしていく」「人をたくさん入れるのではなく、どう更新していくか」「消費価値から蓄積価値へ」などをキーワードとしつつ、人の関係をつくっていく「仕組み」と、それを実践する「場所」を両方つくっていきたい、とまとめた。
インディペンデントで場をつくってきた安澤さんならはではの実践と、そこで編まれてきた思考をたっぷりと聞くことで、メンバーそれぞれが自身の立ち位置=音楽における座標軸の形成に一歩近づくことができたようだ。会場がROOM302であったこともあり、終了後にはいつも以上に時間をかけてメンバーから安澤さんへの問いかけが続いた。

Text=高橋創一