2018.10.12(金)

第2回

場所:BUCKLE KÔBÔ

参加型プロジェクトを紐解く

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大田区の京浜島で、『鉄工島フェス』というイベントが2017年から行われている。世界的にも貴重な技術をもった鉄工所や職人が集まる人工島を舞台に、多様なジャンルのミュージシャンによるライブやアーティストによる展示が行われるフェスティバルだ。第2回は、このフェスの参加アーティストのひとり、和田永(えい)さんをゲストに迎え、これまでの活動を振り返りながら、参加型音楽&アートプロジェクトの現在と今後について言葉を交わした。

メンバーは和田さんが制作を行っているBUCKLE KÔBÔを訪れた。京浜島にある、オープンアクセス型アートファクトリーだ。鉄工島フェスのための地域交流バーベキューパーティーが行われていたため、にぎやかな雰囲気が漂っている。フェススタッフの冠那菜奈(かんむり・ななな)さんに状況の説明をしていただいた後、工房内のスタジオエリアにて和田さんの家電楽器(家電を楽器に改造したもの)演奏を聞き、メンバーも楽器に触って、演奏をさせてもらった。その後、工房の2階スペースへ移動し、和田さんのこれまでのお話をたっぷりと伺った。

和田さんは、2009年にオープンリール式テープレコーダーを演奏するグループ、Open Reel Ensembleを結成。2013年にはOpen Reel Orchestraとして初めて人を巻き込んだ形でプロジェクトを展開した。またソロとしても活動を行い、美術作品の制作も手掛けるなど、幅広い動きを見せている。
清宮陵一とは、清宮が主宰している対戦型即興ライブイベント『BOYCOTT RHYTHM MACHINE』で知り合ったという。「2010年にヒューマンビートボクサーのAFRAと共演したのですが、うまくいかなかったんです。でも“うまくいくのが当たり前”ではなくて、そのうまくいかない状況を楽しんでいるところが面白かった」。コンピュータで制御する演奏に、身体が介入していく。その予定調和を崩していく部分が希望に感じたという和田さん。2012年にはターンテーブリストのDJ KENTAROとも共演をした。
その後、清宮が作家と地域が関わるプロジェクトを展開していく中で、和田さんのソロのプロジェクトを行いたいと考えるようになり、2015年からスタートしたのが、古い電化製品を電子楽器として蘇生させるプロジェクト『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』だ。日立、東京、京都の3カ所に拠点を置き、約70人が参加、これまでにさまざまな芸術祭などにも参加をしてきた。

和田さんは政治学者ベネディクト・アンダーソンの「想像の共同体」という言葉を引き、「日本人」や「西洋人」という共同体は想像上のものであることに触れ、それならば「妄想の故郷と文化を持つ」ことも可能なのではないかと問いかけた。「伝統を引き継ぐだけではなく、そこに突然変異を加えることで、おもしろいものがつくれるのではないか」。そう語る和田さんは、『エレクトロニコス・ファンタスティコス!』という共同体で情報共有を際に、Facebookを活用。常にハッカソンをやっているようなもの、という和田さん本人も把握しきれないほど、メンバーの動きは活発だという。

ここまでの話を受けて、メンバーから「参加型のプロジェクトを行ってみてどう感じているか」という質問があがった。これに対して和田さんは「常にクオリティコントロールの問題など、ジレンマもあるが、なぜかうまくいっている。ものづくりのときに悶々としていても突破口は開けないので、大喜利形式にしたりするなど、工夫をすることでスランプが起きなくなったように思う」と応え、常にいいエラーやフレッシュさがあると答えた。
清宮は、最初はすべて和田さんの傘の中にあったが、メンバーとの物理的な距離が生まれることで、だんだんそれが崩れてきたことを指摘。プロジェクトが作家の枠に収まらず、勝手に動き出すようになったという。「大勢の人とクリエイションするのは想像してなかった。音楽だからできているのかもしれない」と振り返る和田さんは、「エンジニアと音楽家が一緒の場所にいるのが貴重。技術と音楽のキャッチボールができている」と現在地を語った。
正解のない道を「共同体」と共に歩んできたからこそ言葉にできる、試行錯誤を聞くことができた時間となった。

Text=高橋創一