2018.9.19(水)

第1回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

音楽史と個人史を交差させる

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音楽を取り巻く環境が多様化、細分化している現在、このスタディでは「これまでと違う仕組みの音楽の有り様をつくる」ことに挑戦するため、音楽の現在点と座標軸を探っていく。これからさまざまなゲストを迎え、対話を重ねていくことで、どのような音楽の姿が見えてくるのだろうか。

顔合わせとなる初回活動日、開始時間の19時半をまわったところで、ナビゲーターの清宮陵一(VINYLSOYUZ LLC代表/NPO法人トッピングイースト理事長)とスタディマネージャーの大内伸輔から挨拶と趣旨説明がなされた。清宮は、ここはレクチャーを行うのではなく、音楽のさまざまな捉え方、考え方を深めていく場にしたいと強調。続けて、今回はメンバーがどのような人か知るために、「人生で最も影響を受けた曲」「最近よく聞く曲」を一曲ずつ紹介してもらうよう話した。
加えて、ホワイトボードに音楽史のトピックや音楽メディアの変遷に関する年表が貼られた。各自が紹介した音楽を紙に書き、年表の中に貼っていくことで、音楽史の中のどこに位置づけられるかを可視化する試みだ。

集まったメンバーはアートプロジェクトの実務者、音楽関係者、学生、クラシック音楽の教育を受けてきた人……など、さまざまなバックグラウンドを持つ人たち。まずは清宮が「人生で最も影響を受けた曲」として物語性や演劇性を含んだDavid Bowieのアルバム『Ziggy Stardust』収録曲の『Starman』を挙げた。続く「最近よく聞く曲」にはYaejiの『Passionfruit』をセレクト。Yaejiは韓国人の両親の元、ニューヨークで生まれ育ち、現在もニューヨークを拠点に活動をしているミュージシャン。この曲は人気ラッパー、DRAKEの代表曲をカバーしたもので、イントネーションにコリアンの訛りがあり、アイデンティティの出し方が面白い、と指摘した。
メンバーの「人生で最も影響を受けた曲」には、クラシックの定番、ベートーヴェンのピアノ曲『月光』をはじめ、クラシックナンバーが目立った。一方、「最近よく聞く曲」ではアニメーションやゲームの音楽、ジャズのスタンダード・ナンバー、自分の娘がトイピアノで弾いた曲など、さまざまなジャンルの音楽が挙がった。
全員が紹介を終えたあと、清宮は「何から聴いていけばいいか分からないほど音楽が多様になっている中で、今日のように人となりを知って音楽を聴くのはいい体験になったのではないかと思う」といい、音楽自体に限らず、音楽を取り巻くメディアが複雑になっている現状について述べ、音楽プロデューサーのDr.Dreがヘッドフォンブランド『Beats』を手掛けるといったビジネス的な側面も、音楽を考えるうえで重要な視点になるとまとめた。
大内は「今日だけでもすでにいろいろな座標があると感じた。メンバーがそれぞれ自分のテーマを見つける場所にしていきたい」と語った。

次回以降は回ごとに異なるゲストを迎え、じっくりと言葉を交わしながら考えを深めていく。半年間かけて、どのような音楽を耳にし、どのような問いが生まれていくのだろうか。

Text=高橋創一