2019.9.28(土)

第4回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

スタディへの思いを共有する

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9月28日。第4回となる今回は、参加者一同が、スタディに参加することになったきっかけと今後どのような映像制作に取り組んでいきたいかを共有し、ディスカッションを行った。

それぞれが、スタディに参加することになったきっかけは、普段の生活や体験、育ってきた環境や家族からの影響など、バラエティ豊かで、それらを互いに知るだけでも、多様な生活世界があることの再認識へつながっていくようだった。参加者は年齢や職業も幅広く、外国にルーツを持つ人もいれば、同じ場所に住み続けている人もいる。ひとりひとり異なるバックグラウンドを持つが、共通して人の暮らしを調査することや‘Home’に何かしら特別な思いを抱き、このスタディに足を運んでいることがわかる。

両親が海外へ移住したために始まったひとり暮らしをきっかけに、家族の特有な習慣に気づいた参加者は、「環境移行と住みこなし」について考えたいと話す。ほかにも、過去に家族の転勤による数々の移動経験を経て、自らの引っ越しを控えている現在、「自分にとっての故郷」を考えたい、新しい環境を‘Home’と感じるまで、さまざまな要素を組み合わせながら取り巻く状況をつくっていく「実験」をしてみたい、大橋が制作した『移動する「家族」』に刺激を受けた、‘Home’感がにじみ出やすいキッチンへ注目してみたいなど、移動や家族を含めた自分の生活環境への関心の高さがうかがえ、そうした関心の裏側には、参加者の現在にいたるまでの経験が色濃く反映されているようだった。

また、‘Home’の感覚は何から得られるものなのかという問いを、アイデンティティと結びつけて掘り下げていくことも、ひとつの大きなテーマとして浮かび上がってきた。ある参加者は生まれの地にも、いま住んでいる地にもどこか馴染めない一方で、どちらに対しても‘Home’と感じ、景色を見ると「帰ってきた」という感覚を抱いている。また、「東京に帰ってきたけれど、以前のように東京を‘Home’のように感じない。留学先に‘Home’のかけらを置いてきてしまったように感じる」と語る参加者は、東京で生まれ育ったが、留学をきっかけにアイデンティティの揺らぎを感じるようになったそうだ。「タワーマンションに住むことをコンプレックスに感じながらも、そこに帰るとホッとする自分がいる。機械的に見える都市のなかにも、住まいの工夫は実際にある」と語る参加者は、都市のなかの住まいの工夫を通じて、東京に住み、居心地の良さを覚える自分を肯定的にとらえたいと考えているという。

自分と関係を持たない第三者の暮らしへのアプローチの試みに関しても、活発な議論が行われた。そもそも家を持たない人々の‘Home’観への興味から、「アドレスホッパー」についての調査を考えていたり、さまざまなものに対して自分で解釈し、主観性を持たせる瞬間(暮らしの工夫がされたものやする人)」をたくさん撮りたいという構想があったりする参加者も。東京に長く住むも、いまだどこか馴染めなさを感じているという参加者は、「ずっと東京に住み続けている人や、東京を愛し、東京を‘Home’ととらえる人が描く東京の姿を見てみたい」とのこと。第三者への調査のなかでも「家」というひとつの場所に限定しない‘Home’のとらえ方、表現方法や表現されたものへの関心も見られた。

プレゼンテーションを通じて、各自の経験や思いとともに少しずつ、‘Home’の感覚が言語化されていき、終盤に向かうにつれてディスカッションはさらに盛り上がりを見せた。参加者からどこか語らずにはいられないような、表現せずにはいられないような熱っぽさが感じられ、同じスタディに参加する仲間をもっと知りたいという思いが湧き上がっていた。プライベートシェアハウスに住む参加者は、帰宅時に「帰ってきた」という感覚が薄く、シェアハウスのルールや誰かの存在、距離感によって‘Home’への感覚が異なってくるかもしれないと共有した。また、何かの儀式やルーティンが‘Home’のキーポイントになるという議論からは、「儀式やルーティンで使うものが動かせるのであれば、どこも‘Home’になりうる。その儀式やルーティンが場所を選ぶなら、その場所が‘Home’になるかもしれない」「状況や文脈が揺らいでも、自分の‘Home’の感覚のもとがわかれば、確かなものになるはずだ。それはじっくり時間をかけたり、愛着を込めることで、それが自分のなかで確かなものに変化していく」という意見が出された。すでに存在している‘Home’をどのようにとらえるかといったことから始まった議論は、‘Home’を生み出すには、何が必要なのか、どうすれば良いのかという観点へ発展していった。

参加者のなかには、調査される立場を経験したことのある方もいた。調査に協力する間、調査の目的や、自分の何を理解してもらえているのか、詳細がわからず、疑問を抱えていたという。調査者と調査協力者が互いに理解を深めていくプロセスを、このスタディを通じて体験したいと語った。
現時点ですでに調査協力者が決定している参加者もいれば、まだ模索している参加者も多い。調査対象者へのアプローチや調査方法が数多くあるなかで、どのような道筋を選択したとしても、「あなたと私」の二人称的なかかわりのなかで関係性を丁寧につくり、協働を進めていくことが大切なポイントとなるだろう。

Text=染谷めい(執筆)/森部綾子(構成)