2020.1.11(土)

第11回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

映像作品(プロトタイプ)をみんなで観る・振り返る

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活動日の最終回となる1月11日、今回は11人の参加者が制作した映像作品のプロトタイプを上映し、ディスカッションを行った。調査協力者らを招いて開催する予定の上映会に向けて、これまでの過程を振り返り、映像作品の質をさらに磨き上げていくための時間となった。

リサーチと映像編集のなかで、調査協力者との協働を通して、自分自身を振り返るきっかけを得たと語る参加者が多くいた。スタディ3の参加者とその家族についてリサーチを行った参加者は、自分の移動の経験から東京に長く住んでいる人に関心を抱いていた。調査協力者とその家族をリサーチするなかで、人がふつうに生活していく「あたりまえ」の大事さを実感し、結果として自分と深く向き合う経験になったという。これまでのリサーチと編集を振り返り、彼女は「リサーチャーとしては幼かった。もっとやれたかな」と語り、どうしても自分が気になったことに対して反応してしまい、その背景や理由を聞いてしまう自分がいたことを共有した。一方で調査協力者は、「自分があたりまえだと感じていたことに対して、調査者が反応していたことに驚いた」と語り、自分が言語化していないけど、大切にしていたことを認識したと話した。リサーチを通じて、調査者と調査協力者のどちらにもその人なりの発見があったことがわかった。

また、協働関係を意識したリサーチを進めた参加者のなかにはこのような体験があった。リサーチと編集作業の全体を通して「協働的につくる」ことを最も意識したという参加者は、映像には直接的には現れないようなリサーチのなかで、相手の思考プロセスがわかるようになったのがおもしろかったと語った。協力者に映像を見せたときにも「何も違和感がない」と言ってくれたことを共有し、協働関係について振り返った。
調査協力者とはもともとつながりがあったという参加者は、協力者の生活が映像からあぶり出てくるように意識したことを共有。映像編集の段階では協力者とまだ協働関係になりきれていないため、映像作品のプロトタイプを協力者にも見せてから再度編集を行う予定だという。

リサーチを経て、調査協力者との距離感を再認識した参加者も多くいた。自分を語ることにためらいを感じていた参加者は、思い切って自分の‘Home’観を考えるための映像作品を制作した。これをきっかけに、これまで実家に対して抱いた感覚が変わり、肩の力を抜いて実家に帰れるようになったことで、実家との距離感が少し近くなったように感じたという。
自分の祖父母をリサーチした参加者は「撮影しているときは見えなかったが、素材を振り返るときに気づくことがたくさんあった」とし、編集のプロセスを通じて、家族との関係性や歴史を振り返ることができたと語った。また、普段離れて暮らしている祖父をリサーチしたもうひとりの参加者は、一緒に住んでいたら撮れない映像ばかりだったとし、ある程度の距離感があったからこそ、気づけたことがあった、と振り返った。彼女は自分の実家自体が‘Home’というよりも、これからも祖父と一緒に関係性を築くプロセス自体が‘Home’であると語った。

それぞれ上映したプロトタイプに対し、参加者が自由に質問や発言をするかたちでディスカッションが展開していったが、ひとつの映像作品に3つの音源を組み込んでいる参加者に対しては、「どのような基準で音楽を選んでいるか」という質問が上がった。彼女は複数人を同時にリサーチし、調査協力者が過ごしているいまの生活と自分が経験したことを重ね合わせて、時系列的に映像を制作していた。映像が表現している時期ごとに音楽を使い分けている一方で、すでに頭にあるイメージと重なるように音楽を選んでから、それに合わせてカットを考えることもあったという。イラストを用いた表現を考えている参加者に対しては、映像から伝わる躍動感がイラストになったことで消えてしまわないか、という声があった。

プロトタイプの共有とディスカッションを通じて、参加者それぞれに新たな発見と課題が生まれただろう。まだ思考の途中で、プロトタイプが完成していない参加者もいる。リサーチでの発見、伝えたいストーリー、表現方法、協働関係。考えなければならないことはたくさんある。スタディ3、上映会まで走り抜ける。

執筆=染谷めい