2021.7.21 (水)

第0回

ナビゲーターからのメッセージ

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スタディ1「わたしの、あなたの、関わりをほぐす ~共在・共創する新たな身体と思考を拓く~」では、ナビゲーターを和田夏実さん(インタープリター)と岡村成美さん(Designer/Director/Costume Designer/Artist)、スタディマネージャーを嘉原妙(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)が務めます。このスタディは、身体性や感覚が異なる者同士のコミュニケーションの再考をテーマに、自分自身と他者をつなぐ「新たな方法」を探ろう、発明してみようという試みです。ワークショップやリサーチ、ディスカッションを重ねながら、異なる認識世界をもった他者と意思を伝え合うメディアや手法の発明に取り組みます。活動をスタートしていくにあたって、それぞれからのメッセージを掲載。ぜひご覧ください。

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関わりをほぐす

いつ、誰と、どこで、どんなふうに出会うのか。

日々誰かとすれ違い、出会いや協働の中で、その人らしさに触れ、その場でのわたしがうまれ、関係性の糸を編む。そこに関わりの種がうまれたとき、それを紡いでもいいし、種のままで置いておいてもいい。もしかするといつかどこかで、それは思いもよらない形で芽吹き、また紡がれるかもしれない。

スタディ1では、この「関係性の糸の在り方」に着目し、関係性を編んだり紡いだりするときの、身体や感覚や、そのときに何にあなたを記すのか、ということを考えてみたいと思います。

このスタディのナビゲーターであるわたしと岡村さんは、手話という言語をもちいる両親と、音声言語の社会のあいだで、視覚と音、身体と記号のあいだで、ゆらゆら揺れながら世界をつくってきました。日常の中で、伝え方の応用を繰り返していくことで、いろんな発見がありました。

家の2階にいても、別の部屋にいても、身体で話している家族の空気の揺れがうるさいほどに伝わってくること、手で話しているとき、その人自身がもつ記憶が溢れ出て像として視えること、ティッシュや軽い紙、ぬいぐるみを家族の視界に投げて振り向いてくれたときのつながった嬉しさ。

身体や感覚、思考の流れが違う世界で、共に在ろうとするとき、
そこには様々な伝え方の発明がうみだされていきます。

本スタディは、この伝え方の発明を、身体と思考をほぐして、考えながらつくっていくことを目指しています。そのほぐし方のヒントを一緒に探るために、最初のゲストには信頼してやまない3名の方にお願いしました。手話する思考の身体、恋の解体、身体的境界はどこにあるのか。自分とは異なる身体や思考、言葉や触れること、そのまなざし。いつのまにか暗黙知となってしまっていることを、軽やかに崩して、ほぐすことから、共に在るための発明に取り組めたらと思います。

そして、自分にとってしっくりくるメディアや伝え方の発明を、衣服や造形、石や紙、様々な方法で取り組み、拓いていく場がこのスタディ1です。

あなた自身の身体が何を考え、どう他者と関係を紡ごうとしたのか。
そして想いや思考を届けるためには、どんな方法があるのか。

これから出会う皆さんと、共に揺れながら、新しい景色に出会えますように。

ナビゲーター:和田夏実(インタープリター)

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1.自己紹介をお願いします。

岡村成美です。デザイナー、ディレクターとして活動しています。2018年に自身のブランド、LOUD AIR(ラウドエアー)を設立。手話を第一言語とし、ファッション、オブジェ、感覚などを制作。様々なジャンルを通して社会実験しています。

2.今回、スタディ1「わたしの、あなたの、関わりをほぐす ―共在・共創する身体と思考を拓く―」では、自分と異なる認識世界、感覚世界を持つ人々と共在・共創するコミュニケーションについて捉え直したり、そのコミュニケーションを促進・拡張していくような新たな方法を探ろうとするスタディですが、岡村さんご自身にとって、「異なる感覚を持つ他者」との向き合い方や、意識されていることはありますか?また、そのときにどんな難しさやハードルを感じたりしますか?

よく観察するようにしているかもしれないです。必ずしも正しい接し方というものは存在しないですが、自分なりの愛のある向き合い方を心がけています。
普段、手話という言語で話すことが多いですが、異なる感覚や世界を見ている人にものすごく興味が湧きます。なのでよく相手を観察しますし、会話します。第3回のワークショップでゲストの藤本さんと2、3日話すことがあったのですが、見えない世界を見ている藤本さんは人の声を形で覚えていると教えてくれて、私は‟角の取れた少し厚みのある四角”だそうです。
嬉しくて帰ってすぐに絵を描きました。自分の知らない視点から自分を見てくれたことに感動したのを覚えています。わたしは、向き合い方の難しさやハードルは感じません。みんな違うのでそれでいいかな、と思います。

3.参加申込でみなさんにもお尋ねしている質問です。身体とコミュニケーション、言葉と感覚、コミュニケーションメディアに関連することで、いま、岡村さんが考えていることを教えてください。

わたしは普段、衣服やオブジェを制作していますが、わたしのつくる服はよく二度と同じ着方ができないとか着物のようだと言われることが多いです。自分で着物を着ることがありますが、洋服とは違う頭と身体の使い方をする気がしていて、わたしの服は完成しても着ることを考える衣服でありたいなと思っています。自分で身体と向き合って着ていく。みんな異なる身体と感覚を持っていることに、展示に来ていただいた方に自由にまずは着てもらうと、こちらが気付けることがたくさんあります。制作に他者とのコミュニケーションは欠かせないです。
わたしは普段一人で運営をしていますが、制作において様々な職人さんにお願いしています。一着にたくさんの人が関わっている、着るときに少しでもそう感じれたら大事な一着になるんじゃないかと信じてつくっています。

4.スタディ1のメインビジュアルについて。はじめてこのビジュアルと見たとき、表裏一体な感じ、メビウスの輪のような不思議な印象を受けました。
今回、スタディ1のメインビジュアルは、同じくナビゲーターの和田夏実さんと一緒に撮影に出かけられたとお聞きしました。そのとき、お二人でどのようなことを話し合いながら撮影されたのですか?お二人の間でどのようにイメージの共有・対話があったのか気になりました。

メビウスの輪、いいですね。このビジュアルは、20SSと20AWのLOUDAIRのコレクションの一部です。どちらも和田さんと一緒にどのような身体の映し方使い方にするか話しながら撮影したものです。和田さんには、モデルさんがどんな表情をするか身体の使い方をするかを、会話の中で導いてもらっています。身体を柔らかくしたり切ない心にしたり。
ファッションのルックは服がよく見える写真が多いですが、LOUDAIRは結ぶ指先や服から見える足などを捉えた写真をよく撮ります。
和田さんとは普段から柔らかいところの会話をしています。美味しそうな夕日、エロい建物、かわいい言葉など。日常のいいなと思うものをクローズアップしていつも私達自身が会話して楽しみながら撮影しています。

5.最後に、本スタディ1の参加者に向けてメッセージをお願いします。

今回はじめてナビゲーターを務めさせていただくことが決まり、とても光栄です。みなさんとお会いして感じたことを、わたしもわたしなりに最後に形にしたいと思っています。様々な感覚を持つゲストをお呼びして、リラックスしたり、考えて考えて紡いだり、自分と向き合ったり。たくさん使って最後にカタチにしましょう。
何事にも興味を持ち、理解しようと努力できる人、目を見て、向き合って会話できる人に参加していただけたら最高なものができるのではないでしょうか。
みなさんとご一緒できることを楽しみにしています。

ナビゲーター:岡村成美(Designer/Director/Costume Designer/Artist)
聞き手:嘉原妙(スタディ1 スタディマネージャー/アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)

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