2019.11.2(土)

第7回

場所:ROOM302(3331 Arts Chiyoda)

デシタル・ストーリーテリングを学ぶ

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第7回となる11月2日。前半は大橋による映像エスノグラフィーについてのレクチャーを行った。後半は、映像制作に向けた進捗報告&ディスカッションの時間となった。

まずは、前回のスタディで上映された、大橋と水野大二郎先生による協働作品『Transition』(大橋香奈・水野大二郎、2019)に触れつつ、映像作品をつくっていくことにあたっての「振り返り」の重要性と仕方としてのフィールドノートやジャーナルなどを紹介し、作品をつくる上でもまた重要になることを紹介した。

映像エスノグラフィーとは、人々の生活世界、つまり意味の世界を知るためのアプローチのひとつであり、協働的につくるものである。かつ、研究のためのアプローチであるとした上で、映像エスノグラフィーと商業的なドキュメンタリー映画の違いを紹介した。映像エスノグラフィーは研究の目的で「協働的である」ということがより優先される。それに対し、ドキュメンタリー映画の場合、ジャーナリスティックな視点やビジュアルアートとしての面が優先されることが多い。最終的なアウトプットが映像作品であるという点は共通しているものの、目的は大きく異なるのだ。

上記のふたつに加え、今回は90年代にアメリカから始まったデジタル・ストーリーテリングを取り上げた。参考文献として小川明子『デジタル・ストーリーテリング―声なき想いに物語を』(リベルタ出版、2016年)を使いながら、具体的に説明した。

後半は、アイディアサークルと題して、参加者がひとりひとりのプロジェクトのアイディアと現状報告を行う時間を設けた。それぞれの作品制作に向けて掲げているテーマが紹介され、現状の進捗、悩みを全員で共有した。

ある参加者の共有から「自分の母親や祖母とGoogle Mapを使って、特定の場所(故郷)について話をするというシーンがある」という話題が、ほかの参加者を巻き込むかたちで大きく展開した。参加者の多くが、自分の親戚や家族とGoogle Mapを使ってコミュニケーションを取った経験があるという。地図を通じて「過去」と「今」との接続を可能とする貴重な機会であり、映像作品としてまとめるための方法についても意見交換があった。

「武蔵小杉」と「子供」をキーワードとして挙げた参加者は、自身が育ったまちをテーマに高級なまちという認識を超えて、子供の目線でまちを記録するプランを立てていた。タワーマンションの手入れの行き届いた庭で、子供が思いっきり遊んでいる様子を目撃してから、このテーマが浮かんだそうだ。子供を撮影することへのハードルに対し、ほかの参加者からは子供自身に撮影してもらうことでクリアできないかとの提案が上がった。ほかにも撮影対象が自分で撮るという観点から、例えば男女や大人と子供など、撮影者の視点の違いのおもしろさについても話が膨らんだ。

映像を通して何を伝えたいのか、つまり「映像を撮影する意味」に関する悩みの共有もあった。カメラを向けようとしている対象は、12月に予定している引っ越しである。
「引っ越しは自分にとって軽いもの」という思いがもともとあり、‘Home’感を創り出すことできるものを扱いたい気持ちもあるものの、未だにカメラを向ける対象の選定に悩んでいるそうだ。
これに対し、大橋から、「『わからないから、撮ってみる』姿勢で調査をすると良い」とアドバイスがあった。カメラの力を借りて知る機会にすること、つまり最初から意味を考えずに撮影するということである。一定のルールを決めて撮影をし、振り返りのプロセスによって何かを理解したり、自分の考えていたことや大事にしていたことを発見することができるのではないだろうか。

「台湾人 in 東京」をテーマとする参加者は、スマートフォンの言語設定やホーム画面、アプリの種類などから、言語や出身地に対する考え方の違いはどのようにして起きるのかなどに関心を持って取り組んでいる。

「洗濯している隣人を撮影する」ことに取り組んでいる参加者もいた。1月までに引っ越しをする予定の隣人との協働制作の方法への迷いと、すでに撮影された映像が共有された。

また、東京から移動した経験のない人に「東京について語ってもらいたい」というアイディアを持つ参加者は、調査協力者とかかわる際には、言葉以外のものを媒介にすることを考えているという。散歩や料理など、色々なアイディアが挙がった。

「東京のなかでの移動」において、儀式のようなものがあるのだろうかということに焦点を当てた参加者は、20回以上引っ越しを経験している友人へのインタビューをしている。移動の経験のなかで「変わったもの」「変わらなかったもの」はどのようなものだったのか、など引っ越しの準備を30分で終えてしまうという友人と対話しながら、制作に取り組んでいる。

全体を通して大橋は、撮影するにあたり「最初から意味を考えすぎない」「編集のことを考えすぎない」ことを繰り返し参加者に伝えていた。撮影をしてみることで意味を発見し、それを起点としてリサーチ方法を随時アップデートすることも可能であると語った。参加者は次回に向けて、それぞれ撮影を開始する。

執筆=廣瀬花衣/構成=染谷めい